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百七十九粒目『トキメキが見える眼鏡④』

※前回までのあらすじ※

「ときめきが見える眼鏡」を発明した山口さんに連れられて
ファミレスに人間観察に出かけたワイ。
ときめいていそうな人なのに、
ときめきのハートが見えないとき、
「誤作動だ!」
と主張する山口さん。
「100%誤作動とは言い切れないのでは?」
というワイ。
そんなワイに、山口さんが、
「100%誤作動だと確信できるときがある」
といって例を話してくれた。
それは・・・

※前回までのあらすじここまで※
—————————–


「エビフライからハートが出ているときがありましたんや。」

「ええ?!」

「ウェイトレスさんが運んできたお皿に乗ったエビフライから、
ハートがばばばばばって出てましてん。」

「エビフライから、でっか?」

「まちがいなく、エビフライから。タルタルソースかかってましたわ。」

「それやったら、誤作動ですわ。」

「そうでっしゃろ?」

「だってね、エビフライがときめいてるわけがないですからね。
エビフライというのははね、
えびが、海でのんびり過ごしていたのに
むりやり拉致されて
冷たい氷につけられて
ぎちぎちに詰めこまれて運ばれて
生きているのに首をねじ切られて
全身の殻をむかれて
手足をぜんぶもがれて
塩コショウ振られて
卵液にひたされて
パン粉をまとわされて
180度の油で揚げられて
キャベツの千切り添えられて
タルタルソースをかけられて
仕上げにパセリなんかのせられて
これからまさにたべられようとしているのに
そんな身の上でときめいてるわけがないですからね。」

「そうでっしゃろ?100%誤作動でっしゃろ?
 エビフライだけじゃありまへんねんで。
 ほら、さっきのミャーの例だって。
 あれも100%、誤作動や。」

「いや、あれはべつに正作動・・・。」

そのときである。

うお!

と山口さんが声をあげたのを見ると目がまんまるや。

なんや!?と、山口さんの視線の先に目を向けると

「おお!」

とワイも思わず声が出た。

みっつ向こうのテーブルで、一人の女性の頭頂から
ものすごい勢いでハートが出つづけているのである。

「どういうことですか、あれ?」

「あの娘がいま、なにかしらに、尋常でなく、ときめいている。
 または、この眼鏡がいま、尋常でなく、誤作動している。」

その若い女性はテーブルにひとりで座っていて
ちいさなノートパソコンを広げいた。

「大学生でしょうか」
「あのたたずまいは、文学部やな」
「勉強しているんでしょうか。課題のレポート作成とか」
「うむ。スタディ・ハイの状態なのかも」

ながい黒髪で、端正な顔立ちで、
めがねをかけている。
パソコン画面をじっと見て、時々カタカタキーボードをたたいている。

「表情を見る限り、ぜんぜん、ときめいてはなさそうですが。」
「うむ。あのドリンクがものすごくおいしいとか?」

とりわけ、ときめいているようすではないのだが
その頭のてっぺんからは、途切れることなく
ぴろろろろろろろろろろろろろろろろろろ
と、ハートが噴出し続けているのであった。

「外見とは不釣り合いにハートが出てますな。」
「なんなんでしょうね。」
「なんなんやろね。」

ワイらがその若い女性に注目していると、
そこに丸いおぼんを持ってせわしなくホールを動きまわっていたウェイターの若い男が
いったんしゃがみこんで、床におちていたゴミかなんかを拾ったようであった。
それから、その女性のテーブル横を早足で通り過ぎた。
その時、若い女性はちら、と、ウェイターに視線を向けたように見えた。

と、その瞬間である。

女性の頭頂から

どどどどどどどどどどどどどどどど

と爆音をあげて大量のハートが
大噴火よろしくおそろしい勢いで吹きあがって
ファミレスの天井にぶつかって四方八方に飛散した。

「ええええええええええええ」
「なになにーーー?どういうことーーー???」


(つづく)

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