「あなたとは距離を置きたいの。」
「え?」
「決心したのです。」
「どうした?なにがあった?」
「たのしくないの・・・あなたといても。」
「たのしくない?
たしかに、勉強というものは、楽しくないかもしれない。
けれど、厳しいトレーニングを積まないで、どうやって上手になれるというのだ?
ここまで一緒にがんばってきたじゃないか。
辛抱して鍛錬を積んで、今まで頑張ってきたじゃないか。
このまま、続けようよ。」
「もう、決めたのです。」
「もういちど、よく考えてみたまえ。」
「勉強することが
苦しい道だというのなら
長い道のりだというのなら
それならせめて
わたしのすきな本と一緒に勉強したいのです。
苦しい道を一緒に歩いて行くのは
あなたみたいな
堅苦しくて冗談のひとつも言わない冷血なブツ切れの腐ったカツオブシのかすみたいな退屈極まりない参考書じゃなくて
いや、言いすぎました、すみません
とにかく
あなたはよくまとめられた語学学習のための書き物なのだと思いますが
読み物として私にはひとつもおもしろく思えないのです。
わたしのすきな本。読みたい本。
わたしの選んだ本と、一緒に歩いてゆきたいのです。」
「なんてこった。そんなことができるもんか。
ははははは。とんだお花畑だな。
すきな本で勉強だって?やれるもんならやってみるがいいさ。
失敗して、そうしてわかるのだ。
おれの、参考書様の、すばらしさに気づくのだ。
すきにすればいいさ。」
「さよなら。」