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百七十八粒目『ときめきが見えるめがね③』


※前回までのあらすじ※

「ときめきが見える眼鏡」を発明した山口さん。
その眼鏡をかけて見ると、
「ときめきの波動」がピンク色のハートになって見えるというんや。
ワイは「すげえよくできている!」と思うんやが
山口さんは「誤作動する!未完成や!」と不満なんや。
それで、改善のためのフィールドワーク?に、ワイらは出かけた。

※前回までのあらすじここまで※
———-

ワイと山口さんは ふたりそっろて
見るからにあやしい眼鏡かけて
夜道を10分ばかり歩いた。

ふたりは同じあやしい眼鏡をかけてはいたが
ひとりは

「この眼鏡は、たいへん素晴らしい発明品である。
しかし、まだまだ不完全である。」

と思っており、
もうひとりは

「この眼鏡はどうでもいいカスのような発明品である。
しかし、精度はたかく、よくできている。」

と思っているのであった。

道すがら、歩道の植え込みの灌木から、
ホワン、
とハートが飛び出したのがみえた。

山口さんは

「ありゃ、また誤作動ですわ。
 植物からときめきが感知されるようではあきまへん。」

といい、ワイは、

「植物からもときめきの波動が出てるんちゃうんか。
 あの木がなんかのはずみでときめいたんやろな。」

と思った。

さて、二人は
きいろく光るでっかい看板のファミレスはいると
奥まったテーブル席に陣取った。

ファミレスでお食事中のいろんなお客さん
そして歩き回るウェイターさんやウェイトレスさんを観察して
どこからどうときめきのハートが出ているのか
その具合を観察するのである。

家族連れのテーブルの人びとからは
ひっきりなしにハートが出ていたし
お料理が運ばれてくると、ひときわはげしくハートが噴出していた。

動き回るウェイターさんやウェイトレスさんからはハートが出ておらず
「無」の境地で働いているのだな、というのが見てとれた。

しかし、忙しなくホールを行き来しながら
ハートがピロピロ、と出るときもあった。
小さいお子様にはなしかけるときにぴろぴろ、
スタッフ同士で声を掛け合うときにぴろぴろ、
遠慮がちにハートが出るのが見えた。

いやはや、この「ときめきが見えるめがね」
ほんとうに、これは、完成品といってよなのではないか。

そのようにワイが感心しながら観察していると
山口さんが

「あれ、おかしいですわ。」

目で示した方向を見ると
二人の若いカップルが楽しげにおしゃべりしながら食事をしているテーブルであった。
噴水のようにハートをほとばしらせている男に比して
女のほうからいっさいハートが出ていない。

「ね、おかしいですわ。あんなに楽しそうにおしゃべりしてるのに。」

「そうですね。女のひと、あんなにキャッキャいって笑ってるのに、ハートが見えませんね。」

「そうでしょ、ミャーの時もそうだったでしょ?あきらかにハートが見えなあかん状況やのに。」

「いや、でもですよ、ひょっとして、こわいですけど、あんなに楽しそうにしてますけど、
本心では、まったくときめいてないってこと、ないですかね?」

「いやー、それやったら、こわすぎでしょう。
 なにを信じて生きてええのわかりませんわ。それはないですわ。
 あんなたのしそうやのに。」

「でも、ひとですからね。ひとのこころはわかりませんやんか。いや、いぬも、ねこも本心はわからんのかな?」

「いやいやいやいや。逆に、逆にひとなんですからね。
 ぜんぜんおもんない、思うてたら、さすがに態度に出ますて。」

そこに、おおきなフルーツパフェが運ばれてきた。
とたんに女のひとの頭頂から、
プシュシュシュシュ~~、ぴろりろりん、ぴろりろりん、
とハートがはげしくあふれて噴き出した。

ワイはこういった。

「ほらほら!ハートが見えますやんか。
 デザートにはめっちゃときめいてますやんか。
 女ひとがときめいたら、ちゃんと感知できてますやんか。
 だから、眼鏡がおかしいんとちゃうでしょ、これ。
 スイーツにはときめいてるけど
 あの男のひとにはときめいていない、いうことですねん。」

「いやいや、それは無理筋ですわ。
 ミャーの時もそうだったでしょう、まったく一緒ですわ。
 食べものに対するときめきと
 あいてが好きというときめきと
 波動がちがうんでしょうな。
 これではっきりしましたよ。」

そのようにして、ワイらは2時間ほども観察を続けたであろうか。

たいていは、見ていて納得のいくハートの見え方なのだが、
たまに、
「あれ、なんや今のハートは?」
「あれ、ハートが出てないな?」
と思うこともあった。

山口さんはそのたびに

「誤作動ですわ。不具合ですわ。」

というのであった。

「ねえ、山口さん」

ワイは異議を唱えたくて仕方がなかった。

「もちろんね、あれ?なんでかな?
って思う時もありますよ。
ほんでもそれ、誤作動とか、不具合とか、
決めつけない方がええんちゃいまっか。
眼鏡のほうが正しい可能性もあるでしょう?
眼鏡は、偏見なしに、ときめきをとらえているという可能性。
いやね、そりゃ、常識的には考えにくいかもしれませんよ、
しかしそれ、どうしてそんなにきっぱり、否定できます?
100%、これは誤作動だ、とは断定できないんじゃありませんか?」

「いやいや、にゃんたさん、ワイの発明をそれだけ買うてくれるのはありがたいけど、
 これは、まだまだ未完成なんですわ。
 100%、誤作動としか考えられへん。そんなときがありますねん。」

「たとえば?」

「たとえば・・・」

(つづく)

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