ワイが大学生活を始めた「学荘」の話の続きやー。
あいさつ回りの一番目、
一階の廊下の突き当たり、1号室をノックしたんやー。
そしたら、「はいはいはい」いうて、バタバタと、ドアが開いて、
黒縁めがねをかけた、黒髪の男の人が出てきたー。
なんかコメディアンっぽいー。
「わては、落語研究会のキャプテンをしております、大阪亭○○といいますう~」
みたいな感じで、いかにも落語研究会っぽい人が、一号室の人やったー。
実際には「キャプテン」とは名乗ってへんかった。
なんていうんやろ。研究会やから会長か?部活やから部長か?
呼び方はようわからんけど、ワイが入学した大学の落語研究会の、代々受け継がれるキャプテンの名前があって、その何代目かを襲名したひとやったー。
でもそんな、芸名で呼ぶのは、ワイにはちょっとはばかられたから、「中山さん」って呼ぶことにしたー。
なんか、中山さんは、こてこての関西弁というんか、「落語研究会ことば」というのか、なんか特徴のあることばでしゃべるひとやったわー。
「山口県から来はったんでっか。ほうほうほうほう。山口県いうたらあれですなあ。ふぐ。地元では『ふぐ』やのうて、『ふく』いうらしいでんなー。同じものでも地域によって呼び方が違ういうのもおもろいもんですなあ。あら、けっこうなもんをいただいて。これなんでっか?ういろう?ういろういうたら名古屋の名物ですやんか。ほうほうほう。山口のういろうのほうがうまいと。名古屋のういろうはういろうではないと。名古屋のせいでういろうの評判をおとしていると。ええ、それは初耳やなー。それはゆるせまへんなあ。はあはあ、それできみが、ういろう大使となって、山口からはるばる大阪までやってきたというわけでんな。」
とか何とか、ようしゃべる人や―。落語研究会のひとやから、基本、人を楽しませるのが好きなんやろなあ。話の内容は正直あんまおもんないけど、おもしろくしようと努力しているひとやー。
よくしゃべって、おもしろい人やけど、「クラスの人気者の陽のキャラクター」みたいな感じではないんやなー。
落語研究会ですから、どちらかといえば、スポットライトの当たる界隈ではないところで咲いているわけでしょうから、中山さんは「ジャイアンかのび太か?」でいえば、圧倒的にのびたのほうのひとやったー。
でも、人って、キャベツみたいに玉ねぎみたいに、いろんな仮面をかぶっているもんやから、今後、ひょっとしたら中山さんのジャイアン的な、暴力的な一面をみることになるのかもしれんー。
今のところは善良な人やー。
「ほんで、きみは、落語に興味がありそうな顔をしてるけど、うちの会おすすめしまっせー。落語はええでえ~。たのしいで~。おもろいでえ~。」
みたいにさっそく勧誘された―。
でもワイ、もう決めてましたからー。
「ぼく、ボクシングするんですう」っていうたわー。
「ひょえええ。ぼくボクシング!それやったら、落研に誘うたらあきまへんなー。方向性が違いまんがなこれー。ボクシングの試合の日に、よし、今日はリングで思いっきり客をわらわせたるでえ!って、ならへん、ならへん。目指すもんが違うがな。わてらは笑いを取りたい。きみらは、強いといわれたい。反対のほうを向いてますがな。この違いはいかんともしがたいわ―。ほな、きっぱりあきらめます。まあ、目指すもんは違うても、なにか目指すもんがあって、日々研鑽していくいうのは、ええもんでっせ。大学入って、やってみたいことにチャレンジすればよろしいわ。がんばって、ガッツ石松を目指しましょ。」
とか言われたわー。でもガッツ石松さんは目指さへんわー。
(後にボクシング部の監督さんが、ガッツ石松の偉大さを滔々と語ってくれたことあったなー。)
さて、1号室の挨拶は終わり、2号室は空室なもんで、3号室はワイやから1階は終わり。
次は2階やー。
まずは、2階の廊下の突き当たり、5号室や―。
ワイは山口名物ういろう片手に、5号室のドアをノックしたー。
こんにちはー。
(つづく)
2 件のコメント
ボクシング部に入るの早々に決めていたんやね〜!凄いじゃないですか!落研も出来そうな気がしますねんけど!韓国にもそういうのあるんかな?
山口のういろう気になるわ〜。あれ?もしかして貰ったことあったかな?あった様な気もするな〜。一部屋ずつに挨拶、丁寧やわぁ。
どうぶつの森みたいな話の進み方で面白い‼️
次々先住民に挨拶していく訳でっしゃろ
1号室の住民はなかなか個性が豊か?で面白い‼️
どうぶつの森でいうとねずみさんタイプですわな〜