Home / 今日の一粒 / 四十六粒目『もりちゃん』

四十六粒目『もりちゃん』

あんまり親しくもなかったんやけど
幼稚園のとき同じ組で、小学生になっても同じクラスになった、
もりちゃんというおとこのこがおったんや

ちなみにアクセントは、「りちゃん」や。
カちゃん」と同じアクセントやで。

もりちゃんは、ひょろっとしてて、ほそくて、せがたかいねんなー、
そして、なんか、顔が異様にたてに長い子やったんやー。

もりちゃんは、ひとつ得意技を持っていて、

「みんな!しずかにしてっ!」

って、とつぜん、さけぶんや。
それがすごく切羽詰まった言い方だから、
その場にいるみんな、はっとして、しずかになるんや。

そしたら、その静寂を待って、もりちゃんは、

「プウ~」

とか

「ブッ!」

と、音を立てておならをするんやな。

これ、この犯行、何回も、何回も、もりちゃんはやってたんやけど、
みんなが忘れたころにやるんやな。
しかも、

「みんな!しずかにしてっ!」

の言い方が、毎回、迫真なので、
それは、もりちゃんにしてみたら、おならが出そうなときにとっさにやるアドリブ芸だから、
演技しようとしなくても、自然と必死さが出て、切羽詰まった感じになるんやろな、

「みんな!しずかにしてっ!」

それで、みんな、自動反射的に、はっとして、しずかにするんやな。

そして、

「プウ~!」

と、またまた見事に犯行は成功して、みんな、もりちゃんのおならの音を聞かされてしまうんや。

いま思えば、あれはあれで、名人芸やったなあ。

さて、クラスが変わると、「背高順」を決めていた。
あれって、今でもあるんかな?
今はなんか背の高さを気にする子もおるということで、なにかしらの配慮がなされていそうな気もするけど、
ワイらのときは、ふつうに「背高順」ていうのを決めて、体育、移動、集合写真なんかでは、背の順に並んでたわー。

背の判定は、先生がするんや。
ふたりの生徒を背中合わせで立たせて、
目視で、「この子のほうが背が高い!」
って決めていくんやな。

それで、もりちゃんは、だいたい、クラスで1番目か2番目か3番目に背が高いんや。
そのときのクラスでは、背が一番高いのは、沖くんやった。
「おおきい沖」
といわれていたほど背が高くて、これは文句なしで、沖くんが一番背が高い。

そいうことで、2番手争いが注目されたわけや。

もりちゃんと、もとなる。
どちらが背が高いのか。
これは注目の対決や。
そして、クラスのみんなが見守るなか、
もりちゃんと、もとなるの二人は、背中合わせで立ったんや。

その結果、

「もりちゃんのほうが背が高い」

と決着はついたんやけど、ふたりが背中合わせで立っている姿を見て、
みんな、ざわついて、爆笑したんや。

なぜなら、もりちゃんと、もとなる、
肩までの高さは、完全にもとなるのほうが高かったんや。
でも、頭のてっぺんの高さは、もりちゃんのほうが明らかに高かったんや。

つまり、もりちゃんは、頭の長さで勝ったんや。

それは、視覚的に結構なインパクトがあって、
まるで野球で8回まで8点差で負けていたのが、
9回で20点取って逆転したみたいに、
もりちゃんの異様な頭の長さで、
きれいに大逆転勝利が決していたんや。

クラスじゅう笑いの渦になって、なかには鼻水を噴き出して爆笑しているやつもいた。

「頭の長さで勝った!!!!」

って。

もりちゃんは、おしゃべりが面白かった記憶はひとつもないけど、
フォルムというか、存在自体がおもろかったよなー。

あ、あと、もりちゃんは校庭で、いきなり、よしだマルコメを上手投げしたことがあったなー。
それで、よしだは泣いたなー。あれ、なんの意味があったんやー。

2 件のコメント

  • 頭が長いと聞くとおこのみ太郎のイメージしかないけどリアルの頭が長い人ってどんな感じなんだろう

    なんにせよ、ヨシダが上手投げされて泣いてよかったです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です