話の続きや―。
前回のあらすじ。
韓国からやってきたお客さんのダニエルさん。
ダニエルさんが帰国の日に、ワイが車に乗せて駅まで送ってあげる手はずであったが
前日の夜に消費期限切れのおつまみを食べてワイは食あたりの症状を起こしてしまった。
翌朝、何とか町内会の総会に参加したが途中でダウンしてふらふらで歩いて帰ってきた。
そしてダニエルさんに、すまないが、食中毒で死にそうじゃ、もうしわけないが運転むりなので
タクシー代をあげるから、ひとりでタクシーにのって駅まで帰ってくれ、頼んだところーー。
「何を馬鹿なことを言っているんだー」
とダニエルさんは言うんや。
「本当に申し訳ない。吐き気と頭痛で、立っていられません。とても運転無理です」
「なにをー!ばかなこというなー。おおげさにー!酒のんで気分悪くなっただけや―。大丈夫!できる!運転できる!」
「いや、ほんとうに無理です。酒の飲みすぎじゃないです。食あたりとの違いぐらいわかります。しにそうです。あるけません。こんなので運転したら、事故します。寝ます。」
「何を言ってるんだー!一人で帰れなんて、そんなさみしい話があるか―!話にならない!大丈夫!あと一時間あるから、寝て!絶対できるから!運転してよ!とりあえず一時間寝てから考えて!」
っていうんや。なんやこのおっさん。って思ったよ。
でも、あまりにも、あかちゃんぐらい駄々をこねるので、
いやだーいやだーひとりでかえるのいやだー。くるまでおくってくれないといやだー。わーん。ぎゃおー。しねーー。
みたいに言うからああああ。ワイも、それじゃあ少しでも回復するのをねがって、出発ぎりぎりまでやすんでいることにしたわー。
そして、出発の時間になって、ワイは、やっぱり無理です、これで運転したら事故します。というのに、
「事故してもいい!さあはやく。できる!運転できる!いこう!」
と言われて、ワイは、まあ、からだはなんとか動く、運転中は座っていられるから、しんどくなったら路肩に止めて、ゆっくりゆっくりいけばいけるか?と思ってやね。
運転することにしたんや。
決死のダイビングや。
ワイはぜえぜえいいながら、ハンドルを握ってやね、運転したんや。
そしたら隣の座席でバカのダニエルは
「ほら見てみろー、運転できるじゃないかー」
みたいなルンルン顔でいてるねん。
でもこっちはそれに腹を立てている余裕もないから、一生懸命ハンドル握ってやね、運転するわいな。
そしたら途中で
「わた、すきやにいこう」
というんで、すき家によってやね。
ワイもついて入ったけど、とてもめし食える状態じゃないねん。
わいはダニエルさんの隣で突っ伏して寝ていた。
すき家の人には悪いけど。
ダニエルさんは「わたは、たべないのかー?」といって
鮭納豆定食を注文して、鼻歌交じりにおいしそうに食事をしているねん。
そこにかんしては、ワイはダニエルに感心する。
となりで友人が体調不良で苦しんでいようとも
自分は関係ないから、気にせずにおいしい食事を楽しめるということ。
これはほんとうに素晴らしいマインドである。
真実、そう思う。
「ワイのことは気にしないで、おいしく食べてくださいよ」
とワイはこころから言いたい。
そしてそのワイの希望を100%かなえて
ダニエルさんはワイに対する心配なんてうぶ毛ほどもみせずに
一点の曇りもないおいしそうな顔で食事をするのである。
それは本当に素晴らしいな、と思うのである。
さて、そしてダニエルの食事が終わって、
ワイは一生懸命ハンドルにしがみついて運転をして、
途中でいちども路肩に車を止めることもなく、
無事に新山口駅にダニエルさんを送り届けたのである。
いつもなら、新幹線の改札口まで送っていくのだが、とてもじゃないが歩けないから、
車から降りずに、「さよなら」っていうて、ダニエルとお別れしたのである。
そしたら緊張が解けて、しんどくなって、とても運転を続けていられないから、一番近くのコンビニの駐車場にいって、トイレに行って、水買って、車に戻って、水飲んで、車の中で寝ころんで、夕方まで寝ていたのである。
そしてコンビニの駐車場で、日が暮れてから目が覚めて、ようやく体がすこし楽になっていて、
ワイは思ったのである。
運転は無理!思ったけど、
できたじゃないか。
これはダニエルが正しいのか???
友が、一週間の滞在後に、帰国するにあたって、
どんなに体調が悪くても、
「一人でタクシーに乗って帰ってください」
なんていうのはさみしいことで、
そこは万難を排して、最悪、事故を起こすことも覚悟して
どれだけ体調が悪くても、這ってでも、決死の思いで運転して、送り届けるのが正解だったのか。
あのアホが、あんなにごねなければ、ワイは絶対に運転していなかった。
事故をするかもしれないし、そんな状態で車を運転しなかったのは正解であった、
と思って、運転しなかった選択を疑うことはなかったであろう。
しかし、結果、ワイは運転して、無事にダニエルを送り届けることができたのである。
むむむむむ。
「火事場のくそ力」を信頼して、
無理するときは無理するのがいいような気もしてきた。
無理するときは無理ができること。
その限界を自分でわかっていること。
これはカルチャーショックであった。

1件のコメント
そこにいたら、きっと私はダニエルをハリセンで張り飛ばしてると思います。事故が無かったのは奇跡に近いと言っても!会う時があれば、申し訳無いが名前の前に”おバカ”を付けて呼ぶことにしようかな。