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十九粒目『ジョイのこと⑦』

さてジョイとワイは雪解けの日から
けっこう長い時間、夜の散歩をすることになったんや。
ジョイもきっと
「ええなー。」
と喜んでいたことと思うが
ワイにとっても、夜に散歩をすることが
だんだんと楽しみになってきた。

ジョイが「相撲」が好きで、ワイが親方となって、ジョイを鍛えた話は前にしたけれど、
ジョイはなんか、成犬になって、屈強な戦士となっていたんや。
ジョイは目がきれいで、ワイにとっては見た目もめっちゃ可愛いんやけど、
けっこう体も大きくなって、何しろ全身の体毛が黒っぽい茶色系統なもんで、
ぱっと見は、ダークな感じがするもんやから、
通りすがりの知らない小学生が
「ひ~こわい~」
って言うていたのを何度か見たかけことがある。

で、ジョイはなんか、たたかうのが好きやったんやなー。
今考えれば、ワイがのちにボクシングをしたのも
ジョイがあれだけ強かったことが影響したのかもしれないなー。
「ジョイがあんだけ強かったんやから、ワイも強いやろ」
みたいな。因果関係が何もない理屈で、そう思い込んでいたフシがあるかもなー。ワイ、アホなとこあるからなー。

ジョイを散歩に連れて行って、
見知らぬノラ犬に出くわすと、
ジョイはかならず突進していって、
あっという間に組み伏せてしまってたなー。
そういうことは何度もあって、
ジョイは負けたことがない。
自分より大きな犬でも、3秒で決着や。
連戦連勝やったなー。

もちろんワイは、それを制止するどころか、
ジョイが突撃しやすいように、リードを緩めてあげて、
「ゆけっ!ジョイ!」
とけしかけるんやー。

相手の犬は、
「まけましたっ。降参です。しばかんといてください。」
という格好をするんやなー。

「ジョイ、強い!」

と、まるでオリンピックの柔道で母国代表の選手が一本勝ちしたのをテレビで見て喜ぶおっさんみたいに、無邪気に誇らしい気分になってたわー。
今考えたら、なんで犬って、
犬って一般化してはいけないか、ジョイって、
あんなにけんかっ早かったんやろなー。
「ワイの方が強いんやでー!」
っていいたかったんかな。
謎なところあるな。

でも、犬は、相手が降参したら、ぴたっとやめるんやな。

近所のシゲタさんとこで飼われている、黒と白の「のらくろ」みたいな犬がいて、
たまに放し飼いにされていて、町内をうろうろしているんやけど、
なぜかワイら近所の子どもたちはその犬にムカついていて、
「シゲタんちのバカ犬」
って呼んでた。

ジョイがこいぬのころに、電信柱の下におしっこをすると、
そのバカ犬がさささっとやってきて、その上におしっこをかけたことがあったんや。
「ワイの縄張りやでー」って、犬がよくやる行為みたいなんやけど、
「なんで、こいぬのおしっこの上に、これ見よがしに、自分のおしっこかけるねんっ」
って、ワイ、腹立ったんや。
気の弱そうな犬のくせして、こいぬ相手には、「自分の方が上やでー」っていいたいんやなあって。

それで、ジョイが成長したあとに一度、このシゲタんちのバカ犬うろうろしていたのに遭遇したんや。
ワイは、
「あ、シゲタんちのバカ犬や!ジョイ、今こそしばいたれ!」
ってけしかけたことがあったなー。
ジョイは猛然とダッシュして、シゲタんちのバカ犬は逃げ出した。

「ひいい。なんや、あの筋肉隆々の焦げ茶色の奴は!やばい、こっち来る!」

ということで一目散に逃げだして、それで袋小路まで追い詰められて、ジョイの前におなかを出して寝転んで、ぶるぶる震えながら、じょじょじょじょじょ~とおしっこを漏らしてしまったんや。

それで、ジョイは攻撃するのをやめたんや。

ワイのほうは、できの悪い人間なもんで、頭に血が上っていたから、
「やったれー!ジョイ!思い知らせちゃれ!」
とこぶしを固めていたけれど、ジョイは相手が降参したら、
「はい、おしまい」なんやなー。

これはジョイに学んだ部分やなー。
これは、今のワイらの会社の社訓にも通じているんやな。

 ひとーつ。わたくしたちはー。
 なにごとであれ
 反省して謝っている人を
 許さないことはないですニャー。

(つづく)


2 件のコメント

  • ひとーつ。わたくしたちはー。
     なにごとであれ
     反省して謝っている人を
     許さないことはないですニャー。

    ジョイは偉いなあ、スカッとしたい!思いが勝っちゃうワイは、またまだ未熟やなぁ

  • 謝られても許せることと許せないことがある。誤ってるのに追い討ちかけたことも、、、。KOさせてるのに、倒れてるのに、、、。人が人をゆるすことは、なんて難しいことなんかと。ジョイは偉いなぁって思う!

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