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五十五粒目『学荘⑤』

今日は湯田のこんこんパークっていう施設にはじめて来たー。
食堂はノートパソコン持ち込んで勉強とか仕事してもええってー^^
ありがとうー。うれしいな―。
ナッツの食べ過ぎで胃がむかついて、何もおなかに入れたくないけど
アイスカフェオレ600円なりを頼んだわー。
足湯のパートは有料やけど、テーブルにすわるだけなら無料やー。
穴場感あるわー。
お客さん、ワイしかおらんけど、採算合うんかなー。
心配や―。


さて、「学荘」第5話ー。

7号室・八木さんの嵐のような勧誘にあったとて、ワイは平気の平佐や。平気のヘイ!若旦那!や。こんなことでひるむようなワイではないのやー。

ワイは「自分」をもっている=がんこもの=人の話を聞かない=妄想癖がある=浮世離れした男の子やからなー。
たとえ、どこかに10年の厳しい訓練を受けて「二人きりで30分話をすれば100%洗脳できる」というプロフェッショナルな宗教勧誘員がいたとして、そいつと二人きりで10時間の宗教勧誘をうけたところで、ワイは絶対に洗脳されないという自信があったからなー。
こんな、大学のサークルごときの、しかも聞いたこともない競技ダンス部の勧誘なんて、屁のカッパなんやー。

「ぼく、ボクシング部に入ると決めておるのデスっ!」

と、助さん格さんがバーンと印籠を出すごとく宣言したったでー。

「ひかえおろう~!頭が高いっ!」

と、胸を張ったんやが、

「ボ、ボクシング部!!!は、ははあああああ!!!!」

とはならずに、八木さん、粘るんやなー。
なかなかやるなー。

「そこをだいめいくん、もういっぺんだけ考えなおしてみよう。
 ボクシングなんて、一発なぐられるたびに、脳細胞が1000個ぐらい死ぬっていわれてるねんでえー。
 だいめいくんの将来を考えても、ここは競技ダンスに鞍替えしよう~!」

「むしろ、それがいいんですよっ。しょうしょう脳細胞が死ぬぐらいがちょうどよいのですっ!ぼくはあたまがよすぎるから~!あたまがよすぎてつらいのだから~」

「そういっている時点で、だいめいくん、すでに脳細胞が少ないからっ!ほんとうに頭がいい人は自分で頭がいいっていわないからっ!だいめいくんはそれ以上、脳細胞が減ると、日常生活に支障をきたすで~!」

と、7号室の前の廊下で押したり引いたりしていると、階下の玄関のドアがガチャッとあく音がしたー。

八木さんが玄関のほうを見下ろすと、

「あ!前田さん~。この子、新入りです~。我が部に勧誘してますう~」

玄関のほうをみると、小柄な、短髪の、しかし顔の濃い、これは完全な、何顔って言うのかな?何顔なのかはわからないけど、とにかく、完全なやつやっ!完全なそれ顔や。何顔かはわからんけど、「完全な」のほうが先に確定しとる。それほど濃い!ワイも濃いって言われがちやけど、この人は、正真正銘、濃いわ!なんていうの?泥ソース顔?そんな感じや―。一口食べたら「濃っ!」って言ってしまう顔や―。

「前田さん、この子はだいめいくんというんですけど、ボクシング部に入るとかふざけたことを言っています。学荘に入った以上は、ダンスをする運命にあるのに、まだ現実を受け入れられていない、かわいそうな子なんです。前田さんからも説得してくださいよー。」

前田さんとよばれた、おそらく6号室の住人であり、競技ダンス部の先輩であろう、短髪で、顔の濃い、背の小さい人は、階段を上ってきて、われわれの前に立つと、突然、狭い廊下で、両手を広げ、ポーズを決めると、くるくると回りだした。

「だいめいくん、見たまえ。これが競技ダンスや!」

競技ダンスとは?
それは、美しさ・技術・パートナーシップ・勝負の世界がガチで融合した、めっちゃ深い競技や。
一言で言うと、
「ペアで踊る社交ダンスを“スポーツ競技化”したもの」
世界共通ルールのもと、技術・表現・正確性を競うダンススポーツ!
ワルツ・タンゴ・チャチャチャ・ルンバ・・・

そうやって解説しながら、前田さんはしばらく踊り続けたわー。
八木さんは、
「見たか、だいめいくん、これがワイの先輩や!競技ダンスのすばらしさや!どや!」
みたいな、うっとりした顔でみてたわー。
びっくりしたわー。
でも、競技ダンスが心底好きなんやなっていうことは伝わってきた。
しかし、ワイは競技ダンスには興味はないねんっ!

「前田さんは、競技ダンスを愛していらっしゃるのですね!」

とワイは言った。

「そうや!三度の飯よりダンスが好きや!」

「わかります。その気持ちわかりますっ。なぜなら、
 それと同じぐらい、ワイはボクシングを愛していて、ボクシングをやりたいからですううう!」

ガーン!!!!!

「八木、あきらめよう。」

「ええ?あれだけ新入りをかならず競技ダンス部に入れようといっていたのに?
 前田さん、前田さんはあれほど嫌がるぼくを誘って、競技ダンス部に入れたではないですか。
 そして、ぼくは、競技ダンス部に入って、彼女もできて、いいことしかありませんでしたああ。
 前田さんに強引に誘ってもらって、ほんとうによかった。感謝をしています。本当に競技ダンス部は最高じゃないですか。
 だから、だいめいくんにも、しあわせになってほしいじゃないですか。ボクシングをすると脳細胞が死ぬんですよ。競技ダンスに心変わりさせた方がだいめいくんは幸せになれますよ。こんなにすぐにあきらめてしまうんですか?」

「八木よ、それはな、おまえのように、なにをやりたいか、決まっていない人間には、おれは全力で競技ダンス部に引き入れようとする。競技ダンス部に入ってよかった!と思わせられる自信が100パーセントある。しかし、このだいめいくんはどうだ。あの時のおまえとは違う。すでに心に火がともっておる。仮に、ここでむりやりダンス部に入れたとしてみ?あの時、ボクシングやっておけばよかった。ってずっと後悔すると思うぞ。ロバを水辺に連れてくることはできるが、ロバに水を飲ませることはできない、と言うだろう。やりたいことが決まっている人間、すでに心に火がついた人間は、止めることができないのだ、八木よ。だれも邪魔をしてはいけないのだ。だいめいくんにはボクシング部に行かせてやろう。」

よくわからんけど、ワイ、許可された―。

そうしてワイはいったん部屋に戻って前田さんにもういろうを渡して、晴れて、学荘の住人の仲間入りとなったんやー。
そして数日後にはボクシング部に入ったー。

(つづくのか?)







1件のコメント

  • ほんまに宗教みたいなお話になってきてるやん!

    7号室は洗脳されてるやん!大丈夫か!?今も変な宗教に勧誘されて入信してるのではなかろうか!?てかその競技ダンス部大丈夫なんか!?

    6号室の今の仕事は宗教勧誘の偉い人かな?プロみたいな判断や!こういう人もいるから意外と大学生で宗教勧誘に負けて洗脳される人がおるんやなあ。リアルや。

    何はともあれ、勧誘回避できてよかったで!

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