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百六十三粒目『勝ち組負け組こわすねこ』

一匹目のねこは白ねこ
二匹目のねこは黒ねこ
三匹目のねこはトラねこである。

さて、

一匹目のねこが

「このよのなかは、『勝ち組』と『負け組』にわかれているそうだ。
 『勝ち組』に入ればどんどん『勝ち組』になってゆき
 『負け組』になれば時間がたつごとにどんどん『勝ち組』への逆転がムリになるらしいのだ。」

といった。

二匹目のねこが

「そうなんや。でも、ほんまかねえ。それだと『負け組』になったら、すくいようがないやないか。」

といった。

一匹目のねこが

 「だから、ぼくは若いうちから『勝ち組』になれるように、せんりゃくをねって、がんばるのだ」

といった。

二匹目のねこが

「ようわからんけども。仮にほんとうに世のなかがそんなふうだったら、ワイはそういう椅子取りゲームみたいなのはすかんなあ!椅子がたりなければ、もうひとつ椅子を持ってくればええことやし、交代ですわったらええし、半分こして座ったりすればええと思うんや。おしりはちょっといたいかもしれんけど。」

一匹目のねこが

「そうはいっても、現実世界は実際にそうなっているじゃないか。現実に合わせなきゃ。
 『負け組』には、なりたくない。ぼくは『勝ち組』になるぜ!『富裕層』に入るぜ!いまから『勝ち組』のオンラインサロンに入って、がんばるぜ!」

といった。

二匹目のねこは

「ようわからんけども。まあ、ほんまにそんな世のなかなら、わいも、『勝ち組』になろうとがんばるかなあ。でもワイは、そんな世のなかは、やっぱり、すかんなあ。仮にワイが『勝ち組』になれたとしても、なんか、いややんかー。どこかに『負け組』がおって、いくら努力しても『負け組』からぬけだせないって。その『負け組』の上にのっかって『勝ち組』の自分らがおるんやろ?だれかが勝てば、だれかが負ける。ほんとうに、いまが、そんな世のなかだと思う?ワイはそんな世のなかってこのましくないけど。そんな生き方していたら、しあわせになりにくいよねえ。ワイだけでもちがう生き方したいなあ。」

といった。

一匹目のねこが

「それは理想をいえばそうかもしれないけど、理想よりも現実をしっかり見ようよ。ぼくたちが生きているのは現実世界なのだ。ぼくはリアリストなのだ。リアルな目で見て、ぼくとかキミには世のなかを変えられる力がある?ないでしょう?自分の力の及ばないことを考えるのはやめて、自分にできることに集中する。現実がそうなのだから、現実にそって『勝ち組』になろうと努力する。それが最適解だね。」

二匹目のねこは

「ようわからんけども。『勝ち組』『負け組』に分かれているのが現実だときみがいうからそうだと仮定して、じゃ、ワイも『勝ち組』になるよう頑張ってみるわー。そして、勝ち組になって、この考えを持ち続けていくわー。『この、勝ち組負け組がある世のなかは、ワイはいやだ。よろしくない。この勝ち組と負け組で分けられる世のなかの、なんと息苦しいことよ。だれもが、勝ちもすれば、負けもする、人生勝ったり負けたり、お互いさまで、たすけあう、みんなでぼちぼちしあわせになれるような世のなかにかえてゆきましょう』これをたえずめざしていたいわー。」

一匹目のねこは

「そう考えるのは自由だからいいけれど。しかし、どうやって変えられるというのかね。そりゃぼくも、みんながしあわせになれる世のなかのほうが理想としてはいいと思うよ。でも、そうじゃないでしょう。むかしからいままで、ずっと、せんそうがなくなったことはないんだよ。それが現実なんだよ。理想をいうなら、具体案をしめせなくちゃ。実現可能な具体的な方法がしめせないのなら、きみは口だけの『お花畑ねこ』と言われてしまいかねないよ。心配になるね。」

二匹目のねこは

「『お花畑ねこ』って、かわいいな!それはそうと、この世のなかが『勝ち組』『負け組』にわかれているととらえて、『勝ち組』になることに一直線に燃えているリアリストのキミでも、『みんながしあわせになれる世のなかのほうが理想としてはいい』っていうのね。
おもうんやけど『現実』という言葉がちょっと居心地わるいから、ちょっとだけ言い換えてみたらどうかしら。
『現実』ではなくて、『現状』のほうがおさまりがいいと思うんやけど。
『現状』は時間とともに変わるもんやからね。」

「変わらないものもあるよ。ねこは翼がないから空をとべないよ。それは変わらないんだよ。飛びたいと理想を持ったら飛べるようになる?世のなかってそういうものだよ。」

「変わらないものはあるさ。けれど、変わるものもあるよ。きみは世のなかって変わらないものだと思う?けっきょく世のなかって、いっぴきいっぴきがどう動くかじゃないのかな。すべてのねこが『わい、せんそうだけはしない。ワイだけはさんかしない』ときめたら、せんそうはなくなるんじゃないのかな。
ねこたちの考え方が変われば、ねこたちの世界は変わると思うんにゃけど。
考えかたを変えればいいだけやん。そんなにむずかしいことかな?」

「わかった、わかった。かんたんなことなのかもしれないね。じゃあきみが、大作家になって、行動でお手本をしめして、『行動する作家』とかになってさ、たくさんのねこたちのこころを動かして、ねこたちの考え方を変えさせて、『勝ち組』『負け組』のない世のなかをつくってくれよ。がんばってくれよ。期待してますよ。そのあいだに、ぼくは『勝ち組』になるからね。」

そこに三匹目のねこが現れて

「『勝ち組』とか『負け組』とか『男闘呼組』とかなんのこっちゃ。うちにはようわからんわ。
 おひさまぽかぽかしてたらそれでしあわせじゃ。」

といった。

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