こいぬのジョイとワイは「相撲」をして遊んだ。ジョイは「相撲」が好きやった。じゃれて向かってくるのをワイはうけとめてひょいっと横に投げる。そしたらまたジョイはじゃれて向かってくるんやな。そんなことをキャッキャ言いながらくり...
さて、ふたたびこいぬを迎えに行ってからは正式にこいぬはうちの家族になったんやー。もう夜になってもさみしがってなくことはなかったし元気いっぱいやった。 ジョイっていう名前はワイのお兄ちゃんの発案やった。おすいぬで、色がかな...
ジョイがいた。 そのことをいつかは書き留めたいとジョイがいなくなってからずっと思っていたけれどワイはこれまで書けなかった。それは 「ジョイは ワシらの家にもらわれて来て ワシらと一緒に過ごして はたして しあわせだったの...
「木下のじいさんが倒れた。」 血を吐いて倒れた。入院してる、というので、病院にお見舞いに行った。 病室の前に名札がかけてあって「木下八喜十」とかかれていた。 病室に入ると「おーおまえかー」とベッドに横たわったまま、木下さ...
「魔が差す」というのでしょうか、思いもしてなかったことを、その瞬間だけ、なぜかやってしまった。そういうことがないでしょうか。後から考えても、なんでそんなことをしてしまったのかわからない。 ひとは、どういうわけで、思いもし...
ふと見た川に、コイが泳いでいるとうれしい。気分がなごんで、ちょっと顔がほころんで、 「ああ、コイや」 と小さくつぶやいてしまう。 あれは、ボクシング部の夏合宿のときや。 海が近い田舎の森の草木に囲まれた古い宿舎。朝の走り...
新人戦のトーナメントのときのこと。その一回戦が、ワイにとっても、藤井にとっても、心躍る、デビュー戦やった。 ワイの試合の結果はと言えば、1ラウンドでまけたわー。 その前の日に、ほかの新人選手たちの試合を見ていたら、逃げな...
なぜ、その藤井の敬語が可笑しかったのか? まずはその背景にある「体育会系」の関係性に思いを巡らせてみるのである。 わたくし幼いころは「体育会系」的なものが苦手でしてー。だいいちに、べつに知らない人と競いたくなかったし、5...
そうして、ワイら四人の一団は「やれやれ、あの人はしょうがないのう」ムードのなか、ぞろぞろと廊下を歩いて進み、ワイらの部屋、D棟の一階の和室、101号室に到着した。 ワイは入口の引き戸を開けて、今川くんと、ウスキ先生と一緒...
だれかの言葉がそれも、目を合わせて言われた言葉が 「ああ、そうやなあ。 ええこと聞いた。 ワイ、これから、そう心がけて生きていこう」 と、胸に刻まれることがある。 その言葉を、のちに思い返したときに 「あの言葉、しかし、...