《はじめに》このエピソードは昭和の時代のお話や―。そして地方の田舎のまちでのお話や―。その世界の風景には、のら犬たちがふつうにおった。ですから、その時代背景を念頭によんでおくんなはれやー。ワイは現在ではぜったいにリードを...
さてジョイとワイは雪解けの日からけっこう長い時間、夜の散歩をすることになったんや。ジョイもきっと「ええなー。」と喜んでいたことと思うがワイにとっても、夜に散歩をすることがだんだんと楽しみになってきた。 ジョイが「相撲」が...
ワイは重たい学生かばんを、右手、左手、と持ち替えながら、家までずっと走ったー。走りながら、 「ジョイや、わるかった。ワイは何も考えてなかった。ゆるしておくれ。ジョイが怒るの、当たり前や。ワイら家族を恨めしく思うのも当たり...
そうして、ジョイとワイら家族との「冷戦時代」というべき時期がはじまった。 とはいえ、けんかをしているとか、腹を立てているとかではないねん。以前のように、すきすきすきー、かわいいかわいいかわいいー、という愛情表現が、お互い...
「ジョイもずいぶん大きくなったからそろそろ鎖につないで、外ですごすようにさせようかー。」 その宣言が、家長・おとーさんから発された。 そのころ、犬という存在は、今みたいには、大事にされていなかったんやな。 いまは、家族の...
こいぬのジョイとワイは「相撲」をして遊んだ。ジョイは「相撲」が好きやった。じゃれて向かってくるのをワイはうけとめてひょいっと横に投げる。そしたらまたジョイはじゃれて向かってくるんやな。そんなことをキャッキャ言いながらくり...
さて、ふたたびこいぬを迎えに行ってからは正式にこいぬはうちの家族になったんやー。もう夜になってもさみしがってなくことはなかったし元気いっぱいやった。 ジョイっていう名前はワイのお兄ちゃんの発案やった。おすいぬで、色がかな...
ジョイがいた。 そのことをいつかは書き留めたいとジョイがいなくなってからずっと思っていたけれどワイはこれまで書けなかった。それは 「ジョイは ワシらの家にもらわれて来て ワシらと一緒に過ごして はたして しあわせだったの...
「魔が差す」というのでしょうか、思いもしてなかったことを、その瞬間だけ、なぜかやってしまった。そういうことがないでしょうか。後から考えても、なんでそんなことをしてしまったのかわからない。 ひとは、どういうわけで、思いもし...
そうして、ワイら四人の一団は「やれやれ、あの人はしょうがないのう」ムードのなか、ぞろぞろと廊下を歩いて進み、ワイらの部屋、D棟の一階の和室、101号室に到着した。 ワイは入口の引き戸を開けて、今川くんと、ウスキ先生と一緒...