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百二十九粒目『妖怪思い出』

妖怪思い出は悪さをするんや。

妖怪思い出があなたにとりつくと
あなたの思い出を引きずり出してくるんやな。

ほんとうは、思い出は思い出のままでええんや。
あなたの肥やしとなって
今のあなたと共に生きているんやから。

だから、思い出は、わざわざ土の中から掘り起こさないほうがいい。
しずかにあなたの栄養になっているのだから。
むしろ掘り起こしたら、あなたとのつながりが逆に切れてしまうんや。

でも、妖怪思い出は、いたずらをするんやな。
そしたら、あなたは、思い出す。

そして、思い出が、
今目の前にいないこと、
でも確かにあのときにはあったこと、
それが取り戻せないこと、
に、泣いてしまうんや。

どこで会ったのかもおぼえていない
顔も覚えていなければ
その人の名前も、住所もわからない。
でも、あのとき、確かに会ったという。
そんな思い出が懐かしすぎて
せつなくて泣いてしまう。
二度と会えないという思いに。

妖怪思い出は、
あなたが過去の思い出に
たしかにあった過去の喪失に、みもだえするのを
よろこんでみているんや。

さて、思い出にまつわる喪失感は、
みんな、妖怪思い出のしわざやねん。
妖怪思い出の、おもちゃにされてたらあかんでー。

妖怪思い出を退治する方法。

それは、
過去は、すべて、今もあるんやってこと。
何も失っていないんや。
今生きているからな。

そしてこれからも失うことはない。
なにも無くさないんや。
大丈夫や。
なにも無くさない。
生きろ!
今、出会っている人、
今みているもの、
そのなかに、過去は全部つながっている。
いつでも一緒にいるんや。
だから、今、会えている人を、思いっきり、大事にすればええんやで。

妖怪思い出、サヨナラや!

1件のコメント

  • 咳が止まらなすぎて寝れない人
    返信

    思い出したくない過去が多すぎて、妖怪もろとも封印してるので問題はナシ!
    過去は振り返らない主義なの(ドヤァ)

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