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百四十八粒目『コチュがたつ物語②』

「いやらしいことをかんがえると、ちん〇がたつようだ。」

とワイは言った。小学校の、2年生か3年生のころだ。

そしたら、ゆっくんは、はげしくわらった。
ゆっくんは、ワイより二才年上だったから、なんとなくの知識があったのかもしれない。

ゆっくんは背が小さいから、ワイはまったく同い年、なんならゆっくんのほうが年下みたいな感覚でいたけれど、
いま考えれば、二さい年上のぶん、せいしん的にゆっくんはお兄さんだったはずで、
よくかんがえてみると、ワイのことを「こどもやな」とおもっていたようなふしがある。

それで、ゆっくんが、
「じゃあ、ひろくんのちん〇をたたせてみせてよ」
といった。

わいは、
「ええけど、そんなこといわれても、たたんで。」

ゆっくんは、

「いやらしいことかんがえたらたつんじゃろ。そしたら、いやらしいことかんがえれ。」

ということで、チャレンジしてみたが、

「あれ、おかしいな。」

たたなかった。

そしたらゆっくんが、

「わしが絵をかいちゃる」

といって、自由帳に、おんなのはだかの絵をかき始めたのだ。

ゆっくんはめっぽう絵がうまいのだ。
色えんぴつまで使ってかいた。

そうして、ゆっくんは、どんどんと、絵をかいては、ワイに見せるのだった。

「ちょっと、たってきた」

「ワハハハハ!」

われわれは、きゃっきゃいいながら、ひとりの少年のち〇こをたたせようと努力した。

断っておくが、ワイは超ド級の恥ずかしがりやであって
母親にも自分のはだかを見られるのははずかしくて「キャー」といってかくしていたほどである。
だれにもみせたくない、みられたくない、ひみつのパンツの向こう側であった。

しかし、ゆっくんだけは、ちがうのだった。
それこそ、ゆっくんとは、おしりのあなを見ても見られても、なんの感情もわかないぐらいに
不思議に一心同体のように感じていた。
人生であとにもさきにも、あんなに気がねなく、他人のかんじがしないで、なんの警戒もなしに、なかよくいられたのは、ゆっくんだけなのである。

そして、ワイも、絵はそこそこじょうずだったので、ゆっくんと交代で、おんなのはだかの絵をかいてゆき、そのうち、じゆうちょうはおんなのはだかのえでいっぱいになった。

けれど、ワイのちん〇は、そこまでぜんかいにたつまでには至らなかった。

ゆっくんが

「まだまだ、たつじゃろう。もっとたたせようやあ。」

わいも、気持ちでは、もっとしっかりと、たたせたいのだが。

「これいじょう、たたんわあ。この絵じゃあ、いやらしい度がたらんのんじゃろう」

といったら、ゆっくんが、

「そこをなんとかしろっちゃあ。なめてみいさん」

といった。

おさなかったために、よくわからなかったが、ゆっくんがなめろというから、ワイはゆっくんの力作のおんなのはだかの絵をなめてみた。ゆっくんはばくしょうしていた。しかし、たたなかった。

その時、外で、がたんごとんと音がして、母親が、自転車に乗って、帰ってきた。

ワイとゆっくんは、大あわてや。

「かくせ、かくせ。」

そんなワイらのあたふたする様子が、ガラス戸ごしに見えたのであろう、母親は、

「やや!ゆっくんがいる。この子ら、また何かわるいことをしているな!」

と、カンがはたらいたにちがいない。そして、

「なにをかくしよるんかねっ!」

と怒鳴りながら、母親は、どどどどどと、ガサ入れに入る大阪府警のようないきおいで家に入ってきた。
そして、

「みせなさいっ!」

おろおろしているワイの手から自由帳を強奪した。

ワイは、大ごえをあげて泣きだした。
ゆっくんは泥棒ねこのようにそそくさと逃げて帰ってしまった。

母親は、自由帳に何がかかれているかをみとめると、びりびりと引き裂きはじめた。

「なんかね!こんな絵を―!!!だれがかいたんかっ!!!」

そのときの光景は、幼きワイの心象では、仁王立ちした母親が長髪をふり乱し、般若の形相と化して一心不乱にノートを引きちぎりまくり、背後には火炎がごうごうと渦巻いていて、「阿鼻叫喚の地獄絵図」であったと記憶している。

ワイは、ただただ、わんわんなきながら、

「ゆっくんがやった、ゆっくんがかいた、ぼくはかいてない、ぜんぶゆっくんがかいた」

と言いつづけたのだった。

(つづく)

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