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三十一粒目『ぼくね、きのう、、、、時が止まった。内またおじさん突然の告白』

車を運転するときには、
いつも緊張感をもって
運転することがたいせつです。

「安全第一」ですが、
しかし、どんなに気をつけていても
追突される可能性はあるでしょう?

そして、車で追突されることを、
「おかまをほられた」
という言い方をすることがあるでしょう?

けれど、車に乗らない人には、そんな言い方、なじみがないでしょう?
いきなり言われても、何のことかわからないでしょう?

わたくし、二十代後半のころ、大阪心斎橋にある韓国総領事館の、
館内警備員の仕事をしていたことがあります。

夜勤の警備だったんですが、
宿直当番の男性の領事館職員さん一人、
わたしら警備会社から派遣の男性が一人、
二人で夜のお留守番をするんですね。

ちなみにその夜間警備の仕事は、数年後には、セコムの導入でなくなってしまいます。

宿直室と、警備員室と、
別々に部屋があるので、
ねむるときは別の部屋なんですが、
終業後の数時間は、
一緒に防犯カメラの映像を見ながら、
宿直室に一緒にいるんですね。

その日の宿直当番は、
秘書のイ・ギョンフンさんっていう
30代後半ぐらいの男性で、
しょっちゅう総領事さんに怒られていて、
「僕には自由がないんですわ」
というのが口ぐせの、
背が低くて角刈りで、
穏やかでやさしい口調のひとだったんですが、
階段を小走りに上るときの動きに特徴があって、
内またでぴょこんぴょこんと足を跳ねあげて階段を上る姿が、
なんかかわいくて、
わたくしはその姿を見てはひそかに
「おもろい」
と楽しんでいた、そんな人でした。

そのイ・ギョンフンさんが、
その日、宿直室に入ってくるなり、
わたくしと二人きりですよ、
わたくしの目をじっと見て、
こういったんです。

「ぼくね、きのう、おかまほられたんですわ」

時が止まった感じがしました。

「え?!」

ってわたくしは言いました。
後頭部を鈍器で殴られたようにくらくらしました。

え?いまなんて言った?「ぼくきのうおかまほられたんですわ」ってきこえたよ?

イ・ギョンフンさんは、ウルウルした目で、神妙な表情をしてましたわ。

なにこの表情?え?やっぱりそういうこと?なぐさめなあかんのかな?でもそんなことある?え?いや、よくあることなんかな?さすが大阪心斎橋。都会は奥が深いわー。

「さいあくでしょ。」

「さいあくですね。」

オウム返しで返答しながら、頭のなかでは、

「????」

って「?」がぐるぐるしていました。

「だれにですか?総領事さんにですか?」
とか聞くわけにもいかず、
話をどうつないでいけばよいのか、
困っていたところに、
別の男性職員さん、キム・ユホさんが入ってこられました。

イ・ギョンフンさんはまた同じように、

「聞いてくださいよ、ぼくね、きのうおかまほられたんですわ」

「え?どこでですの?」

「御堂筋のね・・・」

と会話がスムーズに進むのを聞いているうちに、

あ。ああ。車のこと?追突されたってこと?

よかったあー。

と、なんか、ほんとに、ホッとしましたー。

(おわり)

2 件のコメント

  • いやですわ、そんな、、、

    でも確かに、いつから私はその言葉を知っていたんだろうか、なぜ知ってるのだろう、誰かに教えてもらったのか、親が話すのを自分の中で理解したのか、不思議ですわ

  • 多分、20代後半にそういう内容を聞いても私はピンとこず、車以外の意味は分からなかったと思います。車に追突されたんだという意味しか知らなかったのです。本当に自分でも情報不足というか、頭の中お花畑というか、ま、これが私なんですけど。今なら何でも聞いてください、とまでは胸を張っては言えませんが、歳の数だけ不確かな知識は増えたと思います。さ、こんな時間ですが昨日出来なかった洗濯物干してそろそろ休みたいと思います。今日はネイルが上手く出来て気分上々⤴️😊

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