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三十九粒目『魔力』

これも幼稚園のときの思い出なんやけど。
これは何とも不思議な力について考えさせられるお話なんやー。

まず、はんださだはるくんっていうこがおったんや。
ワイ、ようちえんは
「ふじぐみ」⇒「うめぐみ」
と、二年間すごしたけれど
「ふじぐみ」のとき
はんださだはるくんといちばんなかよしやったと思うんやなー。

はんださだはるくんは、
ある日、おべんとうのじかんに、
タラコの焼いたのをたべて、

「やっぱりこいつはうまいなー」

といったんやな。
お箸でつかんだタラコを見ながら、
もぐもぐタラコを食べながら、そういったんや。
なんでこんなささいなことを覚えているかというと、
当時、ワイも、たらこがだいすきでなー。

「わ、わかる!!」

とハタと膝を打つほどに、そのセリフに同意したからなんやなー。

さて、そんなある日、
ワイが幼稚園の砂場で一人で砂に絵をかいてたら、
なんか見知らぬ女の子が現れたんや。

「なにかきよるん」

ってこえかけてきたんやな。
ほんで、なんか、
「けむし」
とかいったら、
「それはこうでしょ?」
とかいって、ワイの隣にちょこんとしゃがんできて、
一緒に絵をかきだして、
なんか、よくわからないけれど、
ワイ、たのしいなーって思えてきて
過ごしたんやなー。

それで、しばらくお絵かきして、
その女の子は立ち去って行ったんや。

なまえもしらんし、なに組かも知らんし、
恋心を抱いたみたいなこともないし、
ただ、なんかみしらぬ女の子が親しげに話しかけてきて
なぜか二人でならんで砂に絵をかいて
なんか楽しい時間やったわー。

っていうことやったんやなー。

さて、その次の日やったかなー。

ワイとはんださだはるくんは、ふたりで、ならんでブランコを漕いでおったんやな。
一人乗りのブランコが、二つ並んでぶら下がっている、
当時はどこにでも見られた遊具やな。

でも考えてみたらけっこう危ない遊具やでな。
たしかにブランコに乗る爽快感はある。
いかに安全に気をつけて遊ぶか、
ということで身につくものもあると思うし、
野生的な感覚やつよさを養う部分もあるとおもうけど、
たしかにこんな遊具で遊んでいたら、たまには事故もおこるし、大けがもするやろ。
そんなわけで公園の遊具はどんどん撤去されて行ってるらしいなあ。

と、話はもどりまして、
ワイとはんださだはるくんは、ならんでブランコを漕いでおったんや。
青空にびゅーんと、大きく、大きくこいで、
それはまあ、楽しい気分で風を切って、遊んでおったんやな。

そしたらそこに、同じ組の女の子が来て、

「あたしもブランコにのりたい。かわって!」

って言ったんやな。

はんださだはるくんが、

「やだねー!」

っていったんや。

ワイもブランコをゆずる気持ちはなかったなー。

でもその子は粘って、

「かわってー。あたしものりたいー。」

って、なんべんもいうんやなー。

ワイは、無口な幼児やから、あんまりなにもいわんけど、
はんださだはるくんが

「いやだよー」

「べー、だ」

などと答えるんやなー。

ワイも、はんださだはるくんも、
ブランコをゆずる気持ちはなかったんや。

ところがそのときや。
そこに、きのうの、あの砂場の女の子が現れたんや。

それで、女の子は二人になって、
はんださだはるくんに、

「ぶらんこかわってよー!」

っていったんや。

「べー、だ!だれが、かわるもんかー!」

ってはんださだはるくんは強く言った。

そしたら、きのうの砂場の女の子は、
ワイのほうを見たんやな。
目が合ったわ。

そして、もう一人の女の子にむかって、
こう宣言したんや。

「この子ね、あたしのいうことなら、
なんでも聞くんよ」

そして、ワイのほうに向きなおると、

「ねえ、あたしもぶらんこのりたい。かわって」

って言ったんや。

はんださだはるくんは、

「いやだよーん、だれもかわらないよーん!」

って調子に乗っていたんやな。

ところが、次の瞬間、ワイはブランコから降りて、だまってその場から離れたんや。

うしろではんださだはるくんが

「うおおおおーい!!!ひ、ひろあきいいい!!!」

って、あわてて叫んでたけど、ワイは振り返らずにその場を離れたな―。

あれは、なんやったんや。
ワイの実感から言えば、
あれは、魔法やな。

抗えない力があった。
目に見えない強い磁力。
催眠術の原点がそこにはあったわ!

こんなふうにして、無垢な男の子は原価1万5千円の毛皮のコートを100万円で買わされてしまうんや。

魔力にかけられる瞬間って、ホンマにあるねん。
男の子も、女の子も、気をつけるんやでー。

2 件のコメント

  • 魔力、あるある!そういうの!言葉の見えないチカラっていうか。わかるなー!

    「たらこ」についてのエピソード

    そう、あれは遥か昔うんと小さい頃のこと。ニッショーというスーパーに母と一緒に自転車で行っていた時、幼児用の椅子に乗せて貰いながら歌を歌ったりお話したりしながらるんるん🎶で移動してたの。それで「えいちゃん、一つだけよ」と囁くのです。背後から母が。魔力ですねー!だから、欲しいものはいつも一つと決めていました。わたしは、わたしも皆さんと同じくたらこが好きで好きで〜たまらなく好きなのです。ある日、一つに決める時にお菓子よりたらこを選んだんです。で、お会計のとき、手に持っていたたらこがあらら!何ということでしょう!空っぽ!!になってしまっていて、母も店員さんもびっくり!!結局、たらこが入っていた空の入れ物をレジしてもらったと。わたしは、大好き過ぎる”たらこ”をガマン出来ずに「少〜しずつ少しずつ分らないように〜ちょっとだけ〜ちょっとだけ〜」って思いながら食べていたのです。今でも薄っすらと記憶の片隅に残っています。やめられない、とまらないのは”かっぱえびせん”だけではなかったのです。魔の力を、破ってしまった幼児Aのお話でした。

  • な、なんやその魔法、、、

    ワイもかけられてみたいんやけど、、、

    いやでも千夜ちゃんに何か売りつけられても買うやろなあ、、、

    そんな魔法があるのに掛けたことも掛けられたこともない人生、、、

    たらこのしらたき和えが食べたくなったなあ

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