ようちえんにかよっていたときの思い出や。
ワイは「うめぐみ」やった。
あるとき、なんでかわからんけど、なんか、違う組の男の子と、なかよくなったんや。
その子はなにぐみやったんかな?「ももぐみ」あたりかな?
なまえもしらんし、どこに住んでるのかもしらん。
だから、「なかよくなった」といっても、ようするに、
どこかで出会って、顔かたち、すがたや所作をみて、
「お、なんか、このましい人物や」
と、おたがいにおもった、そんなことやったんやろな。
気が合った、ということかな。
なんかしらんけど、かおをみると、おたがい、
おお、わが友よ、みたいなかんじになる。
そんな、よくわからない間柄の、男の子がおったんやな。
ある日、ワイがひとりで道を歩いておったんや。
そしたら、その男の子が、
たぶん、その子の弟なんやろ、
もうちょっと小さい男の子を連れて、
二人で、歩いてきてた。
二人とも、大きな箱、自分の体よりも大きいぐらいの箱を両手に抱えていて、
それは、おもちゃ、自動車のプラモデルみたいやった。
おたがいに気が付いて、
「おお!」「なにしよるん」
みたいになって、
「これ、ぼくのおとうと。ふたりで、おもちゃやさんにこれをとりに行ってたの」
みたいなはなしをしてくれたんや。
ふーん。見たこともない、大きなプラモデルの箱。
すごいなー、って思ってたら、その男の子が、
「これから一緒にうちに行こ。お母さんに言って、きみの分も買ってあげる」
っていうたんや。
ワイ、「いいなー」とか、ひとことも言っていないんやで。
ほしそうにしてたわけでもないと思うんや。
でも、いいなー、っていう空気が出てたんかなあ。
たぶん、その子は、「わけてあげたいタイプ」の子なんやな。
「ぼくと、おとうとが持っているものを、
この子だけが持っていない」
という状況が、「よろしくない」と思えるんやろな。
いわゆる、ジャイアン精神ではない、分かち合いのマインドやな。
「おれのものは、おれのもの。
おまえのものは、おまえのもの。
でも、おれだけがもっていて、
おまえがもっていない、
というのは、よくねえ。
だからお母さんにもういっこ買ってもらおう」
っていう思考やったんやろな。
ワイはそういわれて、
「え?そんなことある?」
いやいや、そんなそんなって、尻込みしたよ。
ワイ、他人からものをもらったら怒られる家庭で育ったし、
そんないいもの、人からもらっちゃいけない、ほしがってもいけない、
心にブレーキがかかっていたよ。
でも、
「ひょっとしたら、ほんまにもらえるかな?
あの大きい箱にはいったやつ、ポンって、かんたんにもらえるんかな?」
って気持ちがあったんやろなあ、
その男の子と弟に、ついていったんや。
五分ぐらい歩いたかな。
「ここがうちだよ!」
と案内されたのは、
石垣に囲まれた洋風の家で、しゃれた感じの細い金属の格子でできたアーチ形の門扉があって、
すこし古びてはいたけれど、重厚な感じのお宅やった。
ワイは門の外に立って待っていた。
二人は大きな箱を抱えて門を入っていくと、
「ただいま」
と元気よくいった。
玄関から、お母さんらしき人がでてきて、
おかえり、ちゃんと受け取ってきた?
みたいなことを言って、
門の外に立っているワイに気がついて、
「あら、おともだち?」
ていった。
そしたら、その男の子が言うたんや
「おかあさん、あの子にも同じの買ってあげたい。」
「え?」
「このこね、すごくいい子なの。だから、この子にも買ってあげたい。」
そのようすを見て、ワイ、すぐに察したよ。
こどもやもん。敏感やもん。わかるもん。
お母さん、困ってるやん。
ワイ、得体のしれない子どもやん。
「え?この子、おもちゃ買ってもらえると思ってきたの?」
って思われてるやん。固まってはるやん。
ワイ、「妖怪・クレクレわらし」みたいになってる。
何も言わずに走って逃げたわー。
それから、その男の子とは、会うことがあったのかなあ。
それ以来、関係が深まることはなくて、
いつのまにか、顔を見なくなっていたから、
すぐに引っ越していったのかもしれないなー。
短い間やったけど、顔を見たら、なぜかうれしくなる、
波長の合う子やったなー。
あの子、いま、何してるんかな。
あの、ジャイアンとは違う、分かち合いのマインドは変わってないように思うんやなー。
今も、どこかで、足りない人に何かを分けてあげたい、と思ってるのかもしれんなー。
なにか、やさしい仕事をしているんじゃないかなー。
2 件のコメント
素敵な子ですね🎁
当時のワイさんはそれは気まづい思いをしましたね笑
その子はきっと今も分け与える子のまま大人になっているんでしょうね。
にしてもよく「何組」とかおぼえてますね。
信じられません。何も覚えていない自分が。
私も幼稚園時代に一人気の合う友だちがいたな。八木さんっていうんよ。お遊戯会の役決めで、女の子は、みんなウサギののんたん役を選ぶ中、私と八木さんだけがブタさんを選んだんやわ。私もウサギさんの方が好きやったんやけど、八木さんと話し合ってブタさんに決めた。発表の当日、2人だけのブタさんが人気のウサギさんより目立っていたのは想定外。ウサギ、多過ぎて小屋に隠れ待機する子がいっぱいいたからなんだと大人になってアルバム見てからわかったこと。確かももぐみだった。八木さん、今でもはっきり覚えてる。会いたいなあーって思うばかりなんで、そろそろ探偵ナイトスクープに依頼する時かも。ブタさんのお面、ぷッと吹き出すくらいちょっとリアルに描いたのも懐かしい思い出。わたしは、足りない何かを八木さんに分けてもらってたな。一緒にいて何か気の合う友だち。楽しかったなぁ。