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二十三粒目『ジョイのこと⑪』

「長年の謎が解ける瞬間」
というのがあるよなー。

記憶の片隅のどこかに置き忘れている
「あれはなんやったんやろー」という謎が
何かのはずみで

「はっ!そーゆーことだったのか!」

と、とつぜん氷解する。
ふしぎやなー。

ワイらが子どものころは
町内に、ノラ犬や放し飼いの犬がおった。
ジョイが来るずっと前の話になるんやけど、
ワイは小学2年生ぐらいやったかな。
ある日、道端で、近所の年下の子どもたちがキャッキャ言ってはしゃいでいる。
みると、子どもたちの輪の中に、
バンとチルがおってやな、
お互いのおしりをくっつけた状態で、
フォークダンスするみたいに、前に行ったり、後ろに行ったり、しているんや。

「みてみて、バンとチルがおしりをくっつけてるー」

きゃはははは、とみんな喜んでいた。

バンというのは、こげ茶色の大きなオス犬や。
基本、タカハシさんちの犬なんやけど、
たまに放し飼いされていて、町内をうろついていたんや。

「バンはつええぞ。毒まんじゅうを食べても死なんかった」

という武勇伝が子供たちの間ではひろく語られていて、
近所の犬の中では一番からだが大きかったし、
なんか一目置かれている存在がバンやった。

チルのほうは、黄土色のブチのある白い小さなメス犬で、
両耳が黄土色で、眉間にちょこんとしずくの形の模様があって、
それがたいへんかわいらしかった。
もちろんノラ犬なもんで、小汚いといえば小汚いんやけど、
やさしい目をしていて、
なんといっても、「お座り」「お手」がじょうずにできた。
ワイらはチルを見かけると、
「あ、チルだ!チル、チルー」と呼ぶ。
するとチルはしっぽをパタパタと振って目を細めてこっちによって来る。
それで、「お座り」「お手」をする。
これがとても上手に「お座り」「お手」をするねん!
ワイらは「かしこいねー」といって、あたまをなでる。
ワイらはチルが好きやった。
いわばノラ犬界隈のアイドルやった。

その、町内の子どもたちにもおなじみの
バンとチルが、おしりをくっつけて、お互いに困った顔で
右往左往しているんや。

なにやってんねん。へんなのー。

ということで、このような状態を
「バン=チル状態」
と呼ぶことにしましょう。

「猪木・アリ状態」
みたいで、かっこええ呼び方やろ!

その後、ワイは、2回ぐらい、
見知らぬノラ犬が
「バン=チル状態」
になっているのを見たことがあった。

そのたびに、
「あ。バン=チル状態やー」
と思った。

しかし、
なんで犬たちが、
そんなおしりをくっつけてフォークダンスしているのか
いまいち、謎のままであった。

さて、
その謎が完全に解けたのは、
そう。
ほかでもない、
われらがジョイ
の活躍によるのである。

(つづく)







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