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八十五粒目『はずかしいとはなんなのか①』

ワイ、物心ついたころから、ゆっくんとトモダチやった。
ゆっくんは2歳上やから、ゆっくんのほうでは、ワイと初めて出会った時を記憶してるかもしれん。
しかしワイは、うまれたときから世界にゆっくんがおった。
それで、おさないころから、ゆっくんとは他人と思えないぐらいになかよしやったんや。
ほかのひととは、明らかにちがったなあ。。
なんというか、ゆっくんとワイのあいだには、隔てがないんやな。
たとえばワイは恥ずかしがりやで、じぶんの「コチュ」を他人にみられるのが恥ずかしかったけれど
ゆっくんにはまったく平気やったなー。
もう一人の自分のように思えていたのじゃなかろうか。

さて、ようちえんから小学校にかけて
ゆっくんがしょっちゅうワイの家に遊びに来るのが日常であったのだが
ゆっくんは、ワイの家に来ると、

「ひーろーくん!」

と呼ぶのや。
それで、ワイも外に出ていって、二人で遊びに行ったり、
もしくはワイが

「まわってきてー!」

というんやな。
そしたら、ゆっくんは門のとこからはいってきて
家の外周を回って
庭に面したワイの部屋のほうまでトコトコやってきたもんや。

それがまあ、毎日あそんでも、あきることがない。
たのしいことばかりやがな。
ワイとゆっくんは思うままに遊んで、
その遊びが、おとなたちには
「いたずら」
「わるさ」
「わるいいたずら」
「かんがえられんようなわるさ」
と思えたりするようで
ワイのお父さんは
「ゆっくん」と聞くと顔がゆがむほどに
敵視していたもんや。

さて、ある日ゆっくんが、

「ゆっくんばっかり、ひろくんの家に来るのは、ずるい。
たまには、ひろくんも、よびにこい」

といったんや。
「ええで。」
ってなってな、
それで、その次の日に、
ワイが、ゆっくんの家に呼びに行くことにして、
トコトコ歩いて行ったんや。

ゆっくんの家は、子どもの足でも、二分もかからんぐらいの近所やねん。

それで、ワイは、ゆっくんの家についた。
それで、ゆっくんを呼ぼうとした。

ところがや。

あれえ。

「どうやって、よべばええんや?」

いざ、ゆっくんの家についてみて、
まさか、こんな困難に直面するとは思ってなかった。
ゆっくんを呼ぶのがこれ、あんがい、難しいぞ!
とたんにワイは委縮してしまったんや。

ゆっくんは、ワイの家に来たら、おおきなこえで、

「ひーろーくん!」

ってよぶわな。
そしたら、ワイは、当然、

「ゆっくーん!」

と呼べばいいわけやな。

しかああああああし。
ゆっくんがワイを呼ぶときのあのリズム、

「ひーろーくん!」

と同じリズムにしようと思ったら

「ゆーーっくん!」

と呼ばなあかんわけやんか。

それが、なんか、すっごいはずかしくてえええええ。
「ゆーーーーっ」
て、のばすのがぜったいはずかしくてえええ。

あれ、かんたんなことやと思ってたけど、
ゆっくんって、呼ぶのがうまかったんやなあ。
「ひーろーくん!」
って、あんなに明るくよぶの、あれ、才能やで。
むずかしいよなあ。ワイにはできん。

それで、ワイは、冷や汗が出るのを感じながら
こぶしを握り締めて、

「ゆっくん。」

っていうたんやが、
声のボリュームが上がらへん。
それで、のばせない。
はずかしくて。

ぜんぜん、あかるくない。
遊びに来た感じやない!
なんか、厳しい訓練をうけて、教官に鞭でたたかれながら、無理やり言わされている感じや。

ゆっくんがでてこんから、もういっぺん、がんばって、

「ゆっくん。」

って声出した―。
ぜんぜんテンション低いけどー。
精いっぱいやー。

それで、ゆっくんが、ガラッと小窓を開けて、顔を出して、

「いまうんこしてるから!ちょっとまってっ!」

ていうたんやなー。

ああ、ワイが呼んだ声、聞こえたんやな。よかったー。

「なんでそんな殺されかけたときのような呼び方してるの?」

とか言われなくてよかった。

それ以来、ワイが、ゆっくんを呼びに行くことはなかったなー。
次の日からは、もとどおり、ゆっくんがワイの家に呼びに来るようになった。

ゆっくんも、もしかしたら
ワイの重くるしい
「ゆっくん」
呼びを聞いて、
「あ、こいつ呼びに来るのへたなんや」
って、察してくれたんかもしれんなー。

なんやろ、この、
明るく呼べない感じ。
恥ずかしくて声が出ない感じ。

なんでや。
いまならできるけどなー。

「ゆーーーーーっくーーん!」

いや、やっぱりできんかった。
いま、やろうとしたら、あまりの恥ずかしさに声が出てこんかった。
いやあ、できない。
50年近く経過しても、この弱点は克服できていなかった。
これもちょっとした驚きや。

なんやろなー、この、恥ずかしさって。

(つづく)

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2 件のコメント

  • コチュってなに?っと思って調べました( ˙ᒡ̱˙ ®)これも学び( ˙▿˙ )☝

    恥ずかしいことが多い子ですね!

    なんの恥じらいもない私とは真逆ですわ!

    お父さんゆっくん敵視してるのおもろすぎる🖐🏻

    でも「あの子とは遊んじゃいけません!」って言わないのはお父さんの優しさですね!素敵!

    お父さんお誕生日おめでとうございます!

    私は29歳になってもママに「もっと恥じらいを持ちなさい、みっともない!」と言われます。しかし反省しないので、わたしの今のお気に入りのお洋服はど根性ガエルTシャツです。ㄘょーかわƖ ıƖ ıー❤︎ですわ

    そんな何の恥じらいもない私からのワンポイントアドバイスです。多分世界一いらないアドバイス。わたしの本名は実は「まゆか」ですね。そしてわたしの一人称はまゆか▶︎まゆたん▶︎まいたん▶︎ぱいたん👈イマココなわけです。

    じぶんの一人称をこっそり、ひっそり、とても人様の前では言えないものにするのです。そうすることでどんどん恥じらいが無くなってくるでしょう🧐

    恥じらいをなくす、第1歩。世界一いらない第1歩ですね。はじめの一歩もびっくり。

    かわりに私に恥じらいを持つ大切さを教えてください。ママに言われても全然聞く気になれません🤗

  • ゆっくんみたいなお友達がそばにいてくれたことは、毎日が楽しくキラッキラな気分になりますよね。大人になって、そういうの中々無いですやん。ある人もいるんでしょうけども!近くにはいませんわ。

    私もむかーしは、恥ずかしがり屋だったような。でも、今は恥ずかしい事がほぼ無い。でも、食生活を見直す様になってからは自分の無知さ加減と健康に対する意識度の低さに恥ずかしくなりました。まだまだ先は長いですが、健康的になってパワフル50代を目指しますよ〜!

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