Home / 小説(創作) / 百六十四粒目『なに様?屋台』

百六十四粒目『なに様?屋台』

ポメ子は永遠の乙女で
職場の同期のたかはしくんがでっかい白いバラの花束をもってきてプロポーズされて
結婚して二人の女の子をさずかって
ある日こどもたちをつれて水族館にでかけて
その帰り道に屋台があって
今川焼きを売っていて
「あれたべる?」
といったらこどもたちが
「たべる」
といったので
「じゃいまからおかあさんがかってくるから!」
といって今川焼を買いに屋台へ向かったのだった。

その時の気分はルンルンはずんでいたのだが、冬なのですこし寒かった。

「みっつだけ買おう」
と思って屋台の前に立ったとき
「あれ、小銭がないかも?」
としんぱいになっておさいふをたしかめると
百円玉が一枚しかなかった。
お札は千円札がなくて、あるのは5千円札と一万円札だった。

「みっつしか買わないのに、五千円札を出して、たくさんおつりをもらうのって、なんか、しのびないわね」と思われて、屋台のひとをみた。
うす汚れたタオルで鉢巻をした60さいぐらいのおじさんであった。

「あのう、五千円札しかないんですけど、いいですか」

とポメ子はいった。

そしたら、屋台のおじさんは

「何こ?」

とぶっきらぼうにいった。

「あ、さんこです。あの、五千円札しかありませんけど、だいじょうぶでしょうか。」

「釣銭ぐらい準備しちょるわ!何年商売やっちょると思っちょんじゃ。」

といわれてしまった。

ポメ子はしばらく息ができなくなって、

「そんな言いかた、ないんじゃないですかっ。もういいです。いりません。」

といってきびすを返して立ち去った。

こどもたちはおかあさんの剣幕におどろいて、なにもいえなかったのであった。

——————–

「どうおもいます?きのうから、はらがたって、はらがたって!
 なに様なん?っておもいますよっ。」

というポメ子に、アルバイト先の喫茶店の店主のおじさんは大笑いして、

「そしたらその屋台のおじさんをアレしたらよかったじゃないですか。」

といった。

「アレってなんですか。」

「アレとかをもっていって、ガツン!とアレしたらよかったじゃないですか。」

「暴力的なことをいってます?そんな仕返しを望んでいるんじゃありませんよ。」

「でもたぶんそれはそのおじさんも多分アレがあってアレだったんでしょう。」

「アレじゃわからないですけど。それでね、あの屋台のじじいにはもう、いまでも腹立ってますし、あの態度はないと思うんですけどね、ただわたしも、あんなふうに反応してしまって、こどもたちにもいやな思いをさせてね。」

「アレも食べれなくてね、こどもたちも。」

「そうそう、今川焼もね、たべそこねて。わたしはまあいいですけど、下の子がね、帰りの電車のなかで『いまがわやきはぁ?』っていってて。今川焼ひとつ子ども達に食べさせてあげられない母の幼い行動という。それは反省してるんですよね。あの時どういう対応すればよかったんでしょうね。」

「それはやっぱりそのおじさんは、もしかしたらアレやったりとか、アレやったりとかしたかもしれないですよ。それから、たぶん自分の仕事にアレを持っていたんじゃないかなあ。屋台ってけっこうアレだし、たいへんでしょう?しらんけど。」

「確かになんかあったのかもしれませんよね。そうやって、『ああ、このひとには自分には知らない何かの理由があるんだろうな』って、とっさに思えれば腹が立たないのから。」

「寒かったんでしょう?その日は。それで、一個150円ぐらいでしょう?じゃあ屋台に立ちながら、そのおじさんは、『ワイは心に秘めたるアレがあってこの仕事をしていてアレやでえ。毎日アレやけど、おつりはちゃんと毎日アレしてるでえ。』と思ってたのかもしれませんね。」

「そうかあ。『こんなきつい仕事をしながらおまえらにこんな安くておいしいものを売ってやってる』って心構えだったんですかねえ。『ありがとう』って言ってほしかったのかなあ。『たいへんですね』とか。でも、こっちがお客さんだからね。あの態度はどうかと思いますよね。ずっと不機嫌そうでー。じゃあ最初から商売しなかったらいいやんっ!って思っちゃいますねえ。」

「やすくておいしくてあの屋台はアレやでえって評判になってて、みんなからアレされて、じぶんでもアレになってたのかもですね。」

「ぜったい流行ってないと思いますけど。あんな態度じゃあ。」

「それで、いきなり『おつりがアレですか』っていわれて、『なん個買うのかわからんとアレじゃないか』と思ったら、『3個かいっ!』って。」

「なん個でもいいでしょう、いっこでもお客さまでしょう!それだったら、『10個以下では売りません』とか書いてたらいいでしょう。」

「『このお客はアレのくせにアレじゃなあ』とおもったら、もう一回お釣りありますかってアレされたから、アレが発動されて、アレなんじゃないですかねえ。」

「アレアレわからんっ!」

「むこうも『このお客、なに様?』って思ってたのかもですねえ。」

「逆ギレですやんっ。事情があったのかもしれませんけど、お客さんに対する態度じゃないと思うんですよ。『あ、お釣りありますよ。大丈夫ですよ。にっこり^^』ですむ話じゃないですか。まあまあ、ああいう人は、ほかにもいるでしょうから、問題はあたしなんですよ。あの場面でどう対処すればよかったのかなー。」

「それは、ポメ子さんもアレなところがアレですからアレという部分もアレかもしれないですよね。ポメ子さんのアレがアレでようするにアレだから。」

「アレアレわからんっ!」

というわけで、店長は冷凍のアレをポメ子にプレゼントしたのであった。

(おわり)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です