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百四十七粒目『コチュがたつ物語①』

昭和のトイレはべんじょ(便所)とよばれていた。

そうして、べんじょの壁は、全面がタイルなわけではなく、上の部分が土壁であることがよくあった。

ワイのおうちのおべんじょもそんなかんじで、
男性用べんきの容貌は、バーのカウンターの椅子みたいな、まるこいかたちであった。


ワタクシがようちえんじのころ。
ある日、おべんじょでおしっこをしていて
おしっこをしながら、ちん〇を上下左右に操っていた。

おしっこしながらち〇こを操縦するという行為、
これは、男の子ならだれもがやる。
もれなく本能にプログラミングされている。

そしてその日、ワイはすこしばかり気もちがハイになっていたのだろう。
いつもより激しくおち〇ちんを操縦したそのけっか、
べんきの外に、おしこをふりまいてしまった。

そうして、土壁に、おしっこのあとが、びしゃーって、ついた。

「あ、おこられる。」

これは見るからに、たいへんな失敗である。

そしたら案の定、そのあとでべんじょに行ったお母さんが

「かべに、おしっこかけたな!」

といっておこった。

「ひろあきかっ!なんでこんなことするんじゃ!」

と、かなり高いテンションでこられた。
ワイは、当時、家族から評されていた性根、
「すぐうそつく」「すぐいいわけする」
を発揮して、反射的に、
思いついた言いわけを主張した。

「だって、おちんち〇が、ものすごい、たっちょったんじゃ!
たっちょるから、下によう向けれんかったんじゃ!」

ひっしにそう言いわけしながら、
く、苦しい言いわけ~、と思っていた。
「やかましい!」
と、いっしゅうされるものと予想していた。

ところが、おかあさんはとたんに笑いだしてしまって、
おとうさんにワイの言いぶんを告げに行ったのだ。

そしたらおとうさんも笑いだして

「そうじゃね、おちんち〇が上をむいちょるときに、
むりやり下にむけたら、いたいもんね!」

と、肩を組んでくるかのような親愛なる共感をしめしてくれて、
壁におしっこをかけるという、大しったいをしたのにもかかわらず、
「それなら、しょうがない」となぜかゆるされて、それにとどまらず、
夫婦ニコニコ、なごやかな、ハッピーなふんいきが醸成されたのだった。

「なんかしらんが、おこられんかった。よかった。」

そのできごとは、幼きワイにとって、ワケのわからぬ奇妙な体験としてながく記憶にのこった。

(つづく)

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