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百粒目『かっぽん大会』

あのなこれ小学校の一年生の時のはなしやねん。
学校の行事で
「かっぽん大会」
っていうのがあったんや。

これが、なぞの行事でな、
その一回きりで、その後、そんな大会が開かれたことは二度とないんや。
学校の行事って、だれが決めるのかな。
なんか、力のある先生が
「これしましょ」
っていうたら、決まってしまうとか、そういうことがあるんかなー。

ほんでな、「かっぽん」とは何かっていうと
ようするに、缶詰めの、空き缶やな。
あれを二つ、用意して、穴をあけて、それぞれ、ひもを通すねん。
そして、「竹馬」みたいにして、乗るんやな。

画像を「空き缶竹馬」で調べたら出てきたわ。
「かっぽん」では出てこなかったわ。
(なんかへんな河童のキャラクターが出てきた)
「缶ぼっくり」っていうらしいなー。

なんでかしらんが、これを、ワイらの小学校では
「かっぽん」
って名付けとったわ。

そりゃ、それに乗って走ったら、

かっぽん、かっぽん、かっぽん

って、音がしますわな。
それだから、わいら、こどもたちは、ひとりのこらず、

「これ、かっぽんや」

って納得して、公式名称として認知していた。

さあ、これを、クラスの子どもたち全員、
学年の子どもたち全員が、
こしらえてきて、
校庭で、これに乗って、遊ぶんや。

こんなものでも、やってみたら面白みがあるもんで
こんなものでも、コツがあってな、
さっそうと、「かっぽんかっぽんかっぽん」って
疾走できるやつもおれば、
あんまり上手に走られへん子もいるねんな。

そんななかで、ワイは、クラスで1,2位を争うぐらい、
かっぽんに非常に上手に乗れて、ハイスピードで走れていたんやな。

だから、かっぽん大会の日は、たのしみや。

かっぽん大会ではどういうことをするかというと、
そんな競技性の高いものではなくてやな、
校庭の片方に、長ーく、スタートラインを引いて、
そこに子どもたちがずらーっと、かっぽんにのって、並ぶんや。

そうして、
「よーい、スタート!」
の合図とともに、かっぽんに乗って、走り出すんやな。
そして、30メートルぐらいはあったかな?
ゴールラインに向けて走り出す。

それで何秒やったかなー、既定の秒数があって、30秒ぐらいかな?
その間にゴールできたら、合格。
ゴールできなかったら、失格やねん。

だから、大会といっても、最速の一位とか順位を決める大会ではないし、
合格したからって、何があるわけでもないねん。
単なる、名誉やね。得られるものは。
かっぽんで規定の秒数以内に駆け抜けた、という名誉を獲得できるわけ。

それで、ついに、「ついに」っていうほどでもないけど、
かっぽん大会の日が来たんや。

わいはもちろん、よゆうのよしこちゃんで、合格するであろう。
だって、練習の時に、あんなに速いんだからね。
そう、みんな思ってたはずですわ。
それで、ワイは、そのころなかよしだった、
「いもしゅん」こと、いもとしゅんすけくんと
スタートラインに並んでやね
「わー、にゃんたがいちばんはやいじゃろうねー」
みたいなおせじをいわれてやね
余裕のすずしい顔をしておったわけね。

何組かに分かれて、スタートするんやけど、
ワイらの番が来た。
そして、かっぽんに乗って、
「よーい、スタート!」

ワイはさっそうと走り出した。

かっぽんかっぽんかっぽんかっぽん!

ワイはそのときたしかに、1馬身、2馬身抜けて、そのグループの先頭に躍り出たんや。
本番やから、いつも以上に気合が入ってたんやろな!

しかしやね、
惨事や。惨事が起っちゃったんやなあ。

たぶんな、練習では出したことのないスピードが出たんやと思うわ。
それでも、ワイのかっぽんさばきは完璧やったはずやで。
足がもつれるっていうこともなかったし
何の問題もなく、ワイは疾走できていたはずなんや。

缶の強度さえあれば。

そうやねん。ワイのかっぽん、つぶれちゃったんや!

あと少しでゴールできる場所やったと思う。
ワイは、転んじゃったんやなあ。
転んだワイを置いて、たくさんのかっぽんに乗った子供たちが
どんどん抜かしていって、ゴールを目指して走っていく。

ひえええええ、って思って、それでもなんとか、つぶれたかっぽんに乗りなおして、
「まだまにあう!」ってゴールを目指したんや。

もう、たいていの子どもたちは、ゴールしていた。
ふつうに乗っていたら、十分にゴールできるぐらいの、ゆっくりの制限時間やねん。
かっぽんに乗るのが苦手な少数の子たちだけが、ゴールできていない状況やったんや。

しかし、ワイのつぶれたかっぽんでは、前にうまく進めなかったんや。

そこで、「ピー」って、タイムアップの笛が鳴ったんや。
うわー、間に合わんかった―!!!
うそやあああん。

それでワイは、半分泣きべそ、半分笑顔になって、

「かっぽんつぶれてもたああ!!!」

いうてやな、
すでにゴールしている「いもしゅん」こと
なかよしのいもとしゅんじくんのほうに走っていったんや。

ゴールラインの向こうで待っている
なかよしのいもしゅんに駆け寄って、
「うわーにゃんた、ついてないのう!」
って、一緒に笑ってくれると思って、
ゴールラインをまたいだとたん、

いもしゅんは、ワイに般若のような顔をむけて

「だめどお!!!」

と大声でいって、
ワイのむねを、どーーーん!と両手で突き飛ばしたんや。
ワイはゴールラインの手前に押し戻されて、
あんまり強く押されたから、しりもちついちゃったんや。

そのとき、ワイ、ショックやったなあ。

ワイ、こどものころ、人前で泣く子はほんまかっこ悪いと思い込んでいて
何があっても人前では泣くまい、と思っていたけれど、
あのときは、ほんまに、ガチで泣きそうになったなー。

でも、なみだをぐっとこらえてやなー。
いもしゅんは、ワイが、失格なのに、ずるして、合格に加わろうとした
って思って、「だめだよ」っていっただけやから、わるくないんや、ワイが行動誤ったんやって、言い聞かせてな。

そのことで、別にいもしゅんをきらいになることもなかったし
なかよしのまま、いもしゅんが5年生になって転校していくまで
なかよしやったけど

あの瞬間だけは、ほんまにショックで、泣きそうになったなー。

あんしんしてラブ全開であまえていった相手に
「こっちくんな」って、つきとばされるようなことって、きついよねえ。

自分もそんなことをしたことあるのかなあ。
しないように気をつけましょう。

1件のコメント

  • 缶ぼっくり、あったあった!子どもの頃一、二回した記憶あるよ。何故がテンション上がってしまう遊びやったなぁ!ゴール手前でアクシデント、びっくりしたでしょ!つらかったよねー。いもしゅんも、わからんかったんかね!突き飛ばされるような気持ち、わかる〜!わかる!何度も味わってきたわ。気にしない気にしない。今は思い出やねー♪

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