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百六十六粒目『たかはしくんの天啓』

ものっすごい、こわい顔の男がおったんや。
そいつが顔を出すだけで場がピリつくんや。
たかはしくんっていうんやけどな。
も、4歳までの子どもなら、たかはしくんをみたら泣きださない子はおらんのやな。
ほんでたかはしくんはケンカをしたことないけど
「かおがこわい」いう理由ひとつでおそれられておったんやな。
ほんでみんなが「たかはしくん」いうてたんやな。
不良の先輩もたかはしくんのことは「たかはしくん」ってくんづけなんやな。
なぜなら顔がこわいからなんやな。
そのたかはしくんも結婚をしてやな
激辛カレーがすきな女のひととかジェットコースター大すきな女のひととかおるさかいにな
こわい顔がすきな女のひとがおったんやろな。
ほんでかわいいおんなのこが生まれたんやな。
そしたらたかはしくんはこどもをめっぽうかわいがってやな。
あのものっすごいこわかったかおが、やさしくなったんや。
ほんである夏休みの朝のことや
子どもたちが広場でラジオたいそうをしておったときに
たかはしくんはとつぜん

にんげんのしごとは創造や!

って叫んだんや。
ほんで、たかはしくんはすぐに塾をひらいてやな、
こどもたちに
「諸君らは、創造せえ」
いうてな、布教し始めたんやな。
これがたかはし教の始まりやな。
たかはし教の教義はな
「すべての人は創造せよ」
なんやな。
しかし創造いうたかてやな、
なんか芸術的なものをつくりなさいいうんじゃないんやな。
たかはし教の「創造」の定義はな

この世の混沌に秩序を与えること

なんやな。それだけでええし、それがもっとも尊いというんやな。

休みなき創造。終わりなき創造。

それが世のなかを幸福で満たすのや、というんやな。
わかったようなわからんようなはなしやろ?
せやから「掃除」。
これ創造とみなすわけやな。
よのなか、混沌やさかいにな、どんどんチリが積もり、汚くなっていくわけやんな。
それを掃除してきれいにする。
これ、世のなかを変えたわけ。手入れして、整えたわけ。
創造した、とみなすわけや。
これをたかはし教では「この世に生まれた意味」とみなすわけや。
だから、人は幸せになるためには、掃除をしていればよろしい、いうわけなんやけど、
もちろん、掃除だけが創造じゃないわな。

洗濯物を美しく干す

植物を栽培する

生き物を世話する

花をいける

料理する

散歩する

身体を整える

ぐっすりねる

人を励ます言葉をかける

子どもとあそぶ

物語を書く

絵を描く

音楽を奏でる

などなど。

もちろん、クルマつくったり飛行機つくったりパソコンつくったり高層ビルつくったり映画つくったり格闘技で名勝負したり
そいうのもぜんぶ創造なわけやけどな。
「だれでも創造できるんやで」っていうことをさきほどの例では言いたかったんやな。

たかはし教のお経というか祝詞というか
お祈りの言葉はこんなんや

つくり給え。
あそび給え。
わらい給え。

掃除は創造、
美をあらしめ給え。

生活は創造、
便利にととのえ給え。

人間関係は創造、
理解しゆるし給え。

愛は創造、
けんかをやめたまえ~。
ふたりをとめたまえ~。

はあ~。
だ~いじょぶだあ~。
だ~いじょぶだあ~。

というのである。

現在、信徒は世界各地で指数関数的に増えつづけているらしい。
来年には韓国テグのアプ山の中腹にでっかいお堂が建つそうな。
しらんけど。
ぜんっぜん、しらんけど。

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