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百七十粒目『ナカムラくん』

ワイの苗字はワタナベであった。
だから
「ワタナベ」
とか
「ワタナベくん」
とかよばれていた。

ところがあるとき
ボクシング部のOBのタナカさんから

「ナカムラくん」

とよばれたのであった。
「ワタナベです」
とおそれながら訂正したら
「ああ、そうやった」
とすまなさそうな顔をしたけれど
タナカさんは3分後にはまたワイのことを
「ナカムラくん」といったのだった。
ワイは訂正しなかった。

それから一か月ぐらい経って
ワイはアルバイト先のレストランのマネージャーから

「おい、ナカムラ。倉庫に行って、紙ナプキンとってこい。」

といわれた。
ワイは訂正しなかった。


さらにその一週間後に
ワイは大学の事務室に授業料をおさめに行ったのだが
眼鏡をかけた女の事務員さんに

「ナカムラさんご本人で間違いないですね」

といわれた。

それならもうナカムラでええわ。

という気がしたが
三回もこういうことが起こると
さすがにこれ、どういうことや?
なんでこんなにナカムラに間違われるんや?
という疑問がわいた。

ワイは考えた。

「ワタナベとナカムラって
語感が似てるのかもしれんな」

それで
文学部の学友のいりちゃん(男性)にこの説についてきいたら

「ぜんぜんちがうやろ。
ホウレンソウとエノキダケぐらいちがうで」
といわれてしまった。

ということは
どうやらワイは

「ナカムラ顔」

なのではないか?と思うようになった。

ワイの顔を見たら
「ナカムラ」
と人びとは思うのではないか。

犬を見れば
「あ、いぬだ」
ネコを見れば
「あ、ねこだ」
と思い浮かぶように
ワイの顔をみたら
「あ、ナカムラ」
と人々は思うのではないか。

ワイの頭上には見えない文字で
「ナカムラ」
というふり仮名が浮かんでいるのではないだろうか。

それで、この「ナカムラ顔」説についても
いりちゃんに投げかけてみた。

いりちゃんは冷酒をグラスでちびちび飲みながら
クックックとわらうと

「たしかに。
それは、そうかもしれんな。
ワタナベ、おまえの顔がナカムラかと言われれば
そうかもしれんわ。
それと、もう一つ
はっきり言えることがあるわ。
ワタナベ、おまえの顔な
ワタナベではないわ。」

どういうことか解明してほしい。

1件のコメント

  • ホカロンほかほか気持ちいいファンファン
    返信

    解明…できるんか…?

    ワタナベ顔ではない…?

    ナカムラ顔…?

    ???

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