Home / 雑詠・エッセイ / 百四十二粒目『オダさん、見ててや』

百四十二粒目『オダさん、見ててや』

「きみはインディペンデントや」

とオダさんは笑いながら、おおきな体を揺らして言った。
「インディペンデント」だから、よい、とはいわなかったし、
アホやな、ともいわなかったし、
たいへんやろ、とも言わなかった。

ワイはそのとき、二十歳そこそこで、仕事は新聞配達をしていた。
めざすものは、プロボクサーの世界チャンピオン、
ではなく、ミュージシャン、
でもなく、絵描き、
でもなく、芸人、でもなかった。

ーー大作家や。

ワイが目指していたのは。ビクトル・ユゴーや。

世のなかの全体、人間の全体を描く。
一人の主人公の物語ではなく、
あの人も、この人も、その人も生きている世界を書く。
そしてそのなかに、「愛」というか、「まっとうなもの」が否応なしに立ち現れる。
読むと、精神が上がる。

はじめて会ったオダさんを目の前に、ワイは天にも昇る気持ちで話していた。

オダさんの小説を読んで感動しました。
大学院に行っていられないと思い
いまは新聞配達をして食べるだけのお金を稼ぎ
自分で勉強して文学修行しています。
いつかオダさんのような小説を書きたいです。
大学ではボクシングに打ち込んで、脳みそがズレてやめました。
卒業論文はパスカルの研究をしました。

オダさんはそんなワイを、いいとも、わるいとも、言わなかった。
ただ、爆笑して、

「きみはインディペンデントだ。」

といった。

そして名刺をくれて、
「こんど家に遊びにおいでよ。電話して。」
っていった。

そう、ワイは、この点において、まちがいなく幸せ者だと思う。
世界でいちばん尊敬して大好きな作家を、
自分の生き方を話して、爆笑させた人間なのだから。

だから、ワイは最後までオダさんが爆笑するような生き方をしたいのである。

「オダさん、今ぼくは、こういうことしてますよ。」

といったときに、オダさんが爆笑するような生き方を。

オダさん、ワイはいま、五十歳も超えて、けっこんもせずに、大邱に会社を設立しようとしていて、毎日不安で震えながら、韓国の本やまんが(BL含む)やグッズをたいせつにお届けするお店を若いスタッフたちと一緒にしながら、こっそり毎日書きものをかいてブログにアップしていますが、だれにも読まれないでいます。

オダさん、爆笑してくれるやろ?

……
でも、わかってるで。
ワイ、もっと、「現場」に立って、もっと「いいこと」するわな。
次に会った時にまた「おれのトモダチや」って言ってもらえるような生き方するわな。

見ててや。オダさん。

■今日の庭掃除
Before

After(カエル出現)

1件のコメント

  • 防府のクリーンセンターは最低です
    返信

    ちゃんと見てますよ〜👀
    そんな幸せなことがあったんですね!
    それは間違いなく世界一幸せだったでしょう

    うそやろ?この写真からカエル探すん…
    と思って探してたら、思ってたより馬鹿でかいカエルでした笑
    見つかって良かった^^

防府のクリーンセンターは最低です へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です